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平気なの?

2019/6/25

田んぼの畦でよく見かける菊のような白い花はシロバナムシヨケギクといって、その名の通り除虫菊と呼ばれている。

ピレトリンという殺虫成分が抽出できるため、防虫目的で明治以降に米国から持ち込まれた帰化植物である。

戦後直後ぐらいまでは日本が栽培量で世界一だったほどで、現在国内どこに言っても見かけないことはないくらい分布が広いのはその頃の名残であろう。

英語でモスキートコイルと呼ばれる日本の蚊取り線香が、この除虫菊のピレトリンが練り込まれた線香であることはよく知られている。

FUJIFILM X-T3 / XF100-400mm F4.5-5.6 R LM OIS / PROVIA

虫から見たら近づきたくないように思える防虫菊だが、モンシロチョウが盛んに蜜を吸っているところを見ると、蜜には殺虫成分はないようだ。

もっとも、考えてみれば受粉を虫に頼っているのだから、当たり前と言えば当たり前の話だね。

トンボ以上にこちらの動きに敏感なのはチョウの仲間だ。敵から逃げるという目的以上に、とにかく一つの花に付いている時間が短いのである。

蜜を吸い始めてからの見切りが早く、うかうかしているとピンを合わせている間にすぐに飛び立ってしまい、以前なら無駄打ち..何も写っていないカットを量産w..の山を築くのが関の山だった。

が、それもG9 PROやX-T3のプリ連写のおかげで解決しつつある。もちろん狙い通りに行かないのは先日書いた通りだが、少なくても飛び立ちの瞬間は抑えられるようになった。

FUJIFILM X-T3 / XF100-400mm F4.5-5.6 R LM OIS / PROVIA

今回の映像も連写した写真を編集して動画に変換したものである。

先日のカワトンボの動画もそうだが、早いシャッタースピードが必要と書いたものの、実際には1/400程度だったので、どちらも個体の羽ばたきを止めるには至っていない。

やはり日中でもISO3200辺りまで上げて、1/2000以上で撮らないと期待したようには止まらないのだが、さりとてシャッタースピードを上げたら上げたで今度は絶対的なコマ数が不足するので、そこは被写体しだいで判断するしかない。

写真から動画

2019/5/29

代かきが終わって水が引かれたばかりの田んぼには、そこここにトンボの姿が見られる。雄どうしで縄張り争いをしているものや、雄雌で連れ立って産卵しているものなどがいて賑やかである。

なかなか飛んでいる個体を追いかけるのは至難の業..あまり広範囲に動くわけにはいかない事情もあって..で、必然的に止まっているような個体を証拠写真として抑える程度だ。

それでもトンボやチョウの仲間は人影や振動ですぐに飛び立ってしまうので、とりわけ静かにアプローチしなければならない。

FUJIFILM X-T3 / XF100-400mm F4.5-5.6 R LM OIS / PROVIA

撮った時は種名が判らなかったが、たまたま昆虫専科の知り合いと一緒だったので聞いたところ、1枚目はニホンカワトンボの無色型で雌、2枚目は同雄とのこと。

3枚目は交尾中のシオヤトンボで、水色の個体が雄、黄色い個体が雌だとと教えてもらった。

動画はもはや4Kが当たり前の時代になり、コマを一枚切り抜けば理論上は800万画素の静止画となる。パナの4K・6Kフォトなどはそれを機能として実装したものだ。

ただ、動画自体はお約束の1/60〜1/100というシャッタースピードの制約があるため、動体の場合は各コマがブレていてあまり使い物にならない。静止画を切り出すことを前提とするなら、パラパラ漫画になることを覚悟の上で、高速シャッターで撮る必要がある。

それなら逆の発想で、写真を連写したものを編集して動画に変換したらという話になる。

そこでX-T3のプリ連写..でないと昆虫の早い動きを捉えられない..で20コマ先読みで連写した静止画を、4Kハイスピードチックに再編集してみた。

ハイスピードチックにしたのは単純に秒間のコマ数が足らないためだが、プリ連写を使わなければX-T3の場合は30コマ撮れるので、4K/30Pと同等の動画に編集可能である。

もちろん、相応の尺に仕上げるにはかなりのコマを撮る必要があるが、1シーンとして瞬間を抑えるのが目的ならこれで必要十分であろう。

近所のツツジ

2019/5/22

裏山の標高の高いところではアカヤシオだが、中腹ではヤマツツジやクロフネツツジなどが見頃だ。

FUJIFILM X-H1 / XF16-55mm F2.8 R LM WR / PROVIA / Dレンジ優先
FUJIFILM X-H1 / XF16-55mm F2.8 R LM WR / PRO Neg. Hi / Dレンジ優先

某所でエゾハルゼミを今シーズン初。先週辺りから周囲からはボチボチ情報として届いていたが、個人的には今日が初であった。

エゾハルゼミの声を聞くと、そろそろ梅雨を意識してしまうね。

仕事でみなかみに出た帰り、後閑の駅前でツバメを今シーズン初認した。赤城高原ではまだだが、一応地元のことではあるので、備忘録としておく。

FUJIFILM X-H1 / XF55-200mm F3.5-4.8 R LM OIS + MCEX-11 / PROVIA

それと、モンシロチョウも今シーズン初認。県南の平野部ではとうに発生していると思うが、県北で本格的に活動が始まるのは桜が咲く頃である。

それにしてもモンシロチョウの撮影は虫のトーシロには難易度高い。とにかく人の動きに敏感なので、どんなにゆっくりとした動作で近づいても、すぐに逃げられてしまう。

鳥もそうだが、やはりこの手の連中はジッと待つのが吉である。

今日の南関東は昨日の快晴とは打って変わってどんよりした一日。終日南寄りの風が吹いていたが、気温は低く、ダウンまでは必要なかったが、防寒アウターは必須であった。

それでも先日同様に藪のあちこちからホーホケキョとチョットコイ..これはコジュケイね..の合唱が響き、ガビチョウに負けず劣らず賑やかであった。

FUJIFILM X-H1 / XF100-400mm F4.5-5.6 R LM OIS WR / PROVIA

高い空の燕に教えを乞うたのは中島みゆきだったか。朝早くから、西から東へ移動していくイワツバメとヒメアマツバメの混群を確認。

ただ、ひたすら高空を飛んでいくので、撮れたのは証拠写真程度だけどね。

FUJIFILM X-T3 / XF60mmF2.4 R Macro / CLASSIC CHROME

フィールドスコープを使って長時間頭上を仰角で眺めていると、当然首が疲れてくるので時々足元に視線を移すのだが、よく見るとあちこち地面をナナホシテントウが徘徊していた。

そうか、燕に教えを乞うた地上の星とは七星天道のことだったのか、なんてねw

冬から早春にかけての花と言えば、山ならマンサクやダンコウバイ、里ならロウバイやフクジュソウなど、黄色い花から季節が動き始める。

やや風が強い日、春を今かと待つ農地の畦に立っていると、目の前をそんな黄色いものがヒラヒラと移動していくのが目に入る。

地面に落ちた..正確には降りただけど..ところを近づくと、黄色いものは風に飛ばされるようにまた飛んで行ってしまった。

FUJIFILM X-H1 / XF100-400mm F4.5-5.6 R LM OIS WR x 1.4 / PROVIA

虫屋の知人によれば、モンキチョウは早ければ3月には羽化して出てくるらしい。

暖冬で早くに羽化してしまったのかと、ちょっとそういうネタを考えていたのだが、そんなに珍しいことではないとのことだ。

いつも言っていることだが、自然界に人の暦は関係ない。季節の動きに合わせ、自分たちの都合の良いようにそれこそ自然に生きているということだ。

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薄い足袋

2019/1/25

大寒を過ぎたばかりのこの時期、厳しい寒さの中で虫たちの活動はほぼ停止中であり、小鳥たちが動物食をあきらめてヒマワリの種に挙って群がることからも、その辺りの事情は見て取れる。

雑木林に入って朽ち木でも漁れば、それこそ様々な状態で越冬を試みる虫たちを見つけられることは知ってはいるが、虫屋ではないのでそこまで無粋な真似はしない。

FUJIFILM X-H1 / XF35mm F1.4 R / CLASSIC CHROME

そんな色のない冬の林内、遠目にも意外に目立つモスグリーンを発見。何かの繭だろうとは想像つくが、門外漢なので撮影してから後で調べると、ウスタビガというヤママユガの仲間だと判明。

漢字では「薄足袋我」と書き、枝からぶら下がる繭が足袋に似ていることからその名が付いているとのこと。

ただ、よく調べてみると繭で過ごすのは夏の間で、羽化するのは秋から晩秋にかけてらしいので、この時期に繭であることは成虫になれなかった可能性が高い。

FUJIFILM X-H1 / XF35mm F1.4 R / CLASSIC CHROME

こちらはまた別の場所で見つけた種不明の繭。

繭というある種の命のゆりかご的なシェルターに包まれていようとも、外からでは生きているのかどうか定かではない。それに、シジュウカラなど小鳥が繭を突付いて中の蛹を食べているシーンをよく見かけるので、生き延びられない理由は寒さだけではあるまい。

何か一つでも歯車が狂えば簡単に命を落とすのが自然界だ。いや、想定外のことが起きることすら織り込み済みなのが生態系なのかもしれない。

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密怪生命

2018/11/4

この秋の自然界をテーマにした写真展で最大の目玉だったのは、間違いなく今をときめく佐藤岳彦氏だろう。

某自然写真の大御所をして、次は佐藤岳彦の時代だろうと言わしめる若手の有望株..という言い方を今どきするのかw..の佐藤氏は、個人的にも以前からその独特の視点による切り口には大いに興味を惹かれていた。

一億総カメラマン時代の現在、美しいものを当たり前のように美しく撮れる写真家、カメラマンの類は掃いて捨てるほどいると言って良い。

人と同じものを撮っていてはオリジナリティを主張することもままならないが、さりとて自分だけのテーマを見つけることもそう容易い話でもないのは、悲しいかな凡人でも少し考えればすぐ判る。佐藤氏はそんな中で明らかに他の同業者とは異なる視点を持つ稀有な表現者である。

動物が駆ける、鳥が飛ぶ、蝶が舞う、魚が泳ぐ、そんな生きものの生の躍動に焦点を当てるのは誰でも思いつくことであり、言わば当然の成り行きなのだが、密怪生命では生の次、いや生の前にある死に焦点を当てて、死から生への連綿とした命のつながり、やり取りを見事に表現している。

生きものの死を表現する写真家と言えば、自然界の報道写真家を標榜する宮崎学氏と、アラスカに生きる人と生きものの生命の地図をテーマにしていた星野道夫氏が挙げられる。

宮崎氏は死をつぶさにそしてありのままに写し撮って、観る側に問題提起をする手法を用いているが、星野氏は写真だけでなく自分の気持ちを紡いだ言葉による表現を好み、観る者と同時に読み手にその思い、命のつながりを伝える方法を取っている。

密怪生命では、死体やその成れの果てを記録している時点で宮崎氏と似ているが、一瞬これは何を撮ったもの?と観る側に考えさせはするものの、意図するしないは別にして、深く思考しなければそれは一枚一枚が完成された美しいカットにもなり、一歩踏み出して、例えば冬虫夏草だと判れば、死が次の命の糧になることを暗示させるカットにもなる。

写真を見る側の姿勢や思いによって、どちらにも受け取れるような構成になっているのは、佐藤氏の考えなのか、はたまたデザイナーの仕事なのかは判らないが、密怪生命はなかなかアグレッシブに攻めたチャレンジャーな作品集と言えよう。

それと密怪のイメージとして何となくダーク感があるが、一連のカットが影や陰、それに闇などシャドウを強調した作風にまとめてあるが、各主題にはしっかりスポットが当たっているなど、暗い林内における撮影技術も巧みで感心させられる。

この写真集がこの値付けで商業的に成功するようであれば、とかく出版不況で写真集は暗い未来しか見えてこない状況において、写真集制作にもまだまだチャンスがあると思わせてくれる、そんな気がしてならない。

FUJIFILM X-H1 / XF16-55mm F2.8 R LM WR / PROVIA / 1/2にトリミング

森で密怪な生命を探してみたが、凡人にはヤマトシジミぐらいしか目につかず。気温が低いので近づいてもまったく逃げない。

ところで、密怪生命は先月オリンパスギャリーへ写真展を観に行くつもりでいたのだが、上京する仕事が先送りになってしまって、結局観に行けずじまいだった。

そんなことで、密怪ならぬ密林から写真集を手に入れて、チビチビとスコッチ飲みながら夜ごとページを捲っている、という状況を先週飲み会の席で話題にしたところ、取引先の若い子たちが是非見たいというので先日の打ち合わせの時に見せてきたが、皆興味津々で顔寄せ合って眺めていた。

何人かはその場で早速密林に注文を入れていたが、意外にインスタばえだけに興味があるというわけでもないのだなと、ちょっと今どきの若い子らを見直した次第である。

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上越国境は雪化粧とはならなかったが、浅間山が例年より一週間早く初冠雪となった。

嬬恋村が今シーズン初の氷点下で冬日となり、赤城高原もこの秋一番の冷え込みに。まだ体が寒さに慣れていないため、早朝はフリースジャケットなくしては寒くて震えるようだった。

いよいよ冬着たりなばと言ったところか。

LUMIX G9 PRO / LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm F4.0-6.3 ASPH. POWER O.I.S. / ルリタテハ

LUMIX G9 PRO / LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm F4.0-6.3 ASPH. POWER O.I.S. / キタテハ

それでも日中は逆に気持ちが良いくらいよく晴れて、ポカポカ陽気に誘われた虫たちが庭先で活発に動き回っていた。

ルリタテハとキタテハはタテハチョウの仲間で、どちらも翅を広げたときと閉じたときではまったく印象の異なる蝶だ。閉じた状態では枯れ葉に似せたいわゆる擬態となり、そのまま物陰にジッとされると、虫屋ではないのでなかなか見つけるのは容易ではない。

ちなみに両種とも成虫の状態で越冬するらしいが、今日うちの庭にいた個体はどうなのだろうか。