伊吹のイヌワシ営巣ライブがいよいよ始まった。プロジェクトの主催はイーグレット・オフィス(滋賀県)代表の須藤一成氏で、日本初のイヌワシの写真集(Golden Eagle 平凡社刊)を発刊した写真家でもある。
伊吹山はイヌワシの撮影地としては昔からメッカとして知られており、日本中から多くの野鳥カメラマンが集まる場所として有名である。
人が多く集まると指数関数的に問題行動も顕在化してくるのは多くのケースと同様で、伊吹山でもドライブウエイ上をカメラ担いで歩き回ったり、道路脇に踏み出して植生..伊吹は固有種が多い土地柄..を荒らしたりする事態が起きている。
特に問題なのはイヌワシへの餌付け行為..シカの死体などを置くので不法投棄事案でもある..と、飛んでいるワシに飽き足らず巣の場所を探して近づくなどの野生動物に対して適切でない行為が目立ってきていることである。
イヌワシに限ったことではないが、野生動物は人が営巣地に接近することを極度に嫌がるため、最悪の場合は営巣放棄という事態を招くので、絶対的に数が少ない希少種では特に避けねばならないことだ。
撮りたい!というカメラマンの興味を断つのはなかなか難しいことではあるが、対象が絶滅危惧種とあってはそこはやはり一線を引くべきであり、マナーという至極一般的な線引が必要であろう。
尚、今回のイヌワシ営巣ライブは、営巣環境を衆善に晒すことで接近者..その多くはカメラマンだ..への監視行為と、イヌワシを守りたい一般市民との間で生まれる自浄作用を期待してのことである。
本件に関する経緯などは記した記事はこちら
https://mainichi.jp/articles/20230329/k00/00m/040/198000c
今回のプロジェクトは理解ある行政(米原市)とも連携した試み「イヌワシを見守る」になっていて、3月より先行して米原市役所本庁舎と伊吹山文化資料館で公開しており、この4月1日からは一般向けにYouTubeで公開となった運びである。
須藤氏はそれこそ野外でイヌワシを観察する技術では特筆すべきものを持っていて、リモートカメラの設置場所も最新の注意が払われているのは、一切カメラを気にしない抱卵中の雌の様子からも見て取れる。
とは言え今回のプロジェクトは日本初のことであり、そもそもの問題が人の野放図な接近行為にあるわけで、そこに対してどれだけの抑止力となるか、吉と出るか凶と出るかはシーズン終わってみないと誰もわからない。

Canon EOS-1D MarkIII / EF28-300mm F3.5-5.6L IS USM
関ケ原から朝日が昇り、滋賀県を代表する単独峰でもある伊吹山のスカイラインが浮かび上がる。
実は小生、1月から1台モニターを潰して件のライブ映像を仕事中もBGM代わりに流しっぱなしにして眺めており、その時はまだ積雪もあって雄が雪をラッセルするなど興味深いシーンも観られた。
2月には産卵と思しき行動も観られたので、本来の目的と同時に野生のイヌワシの貴重な営巣記録にもなりうるものであると認識している。
ということで、何よりまずは当の伊吹ペアが無事に繁殖に成功してくれることが肝要である。