先日所要で上京した際、オリンパスギャラリーで菅原貴徳氏・中野耕志氏・中村利和氏・水中伸浩氏の4人展「WILD BIRD」を観てきた。当日は海外取材で不在だった中野氏を除いてお三方は在廊中で、開廊してすぐだったこともあって色々話を聞くことが出来た。
四者四様のいずれ劣らぬ作品で、ややもすればセンサーサイズで見下されがちなマイクロフォーサーズ機の面目躍如といった、大伸ばしにも問題なく耐えうる美しい作品群であった。
オリンパスの主催するギャラリーということもあって、四者ともカメラボディに関してはE-M1Mk2、レンズも望遠はほぼサンヨンのPROレンズを使用とのこと。画質はもとより、強力な手ぶれ補正を備えた防塵防滴仕様の同社のサンヨンの評価はずば抜けて高く、海外取材も多いと話していた菅原氏も、その携行性の高さに太鼓判を押していた。
4氏共に現在活躍中のプロの写真家であるが、野鳥写真というジャンルは実はアマチュアカメラマンのほうが勢いがある分野で、プロとてそれだけで飯を食っていくのは相当に大変である。
狙った鳥が目の間にいるというそのシチュエーションに身を置く、つまりその場にいないと観ることすら叶わないという現実があるため、プロとアマの垣根がほぼほぼ無い。
作品の発表の場も、写真集が容易に売れない今の時代、専門誌では文一のバーダー誌のみで、あとはカメラ雑誌の限られた特集ページを他のジャンルと取り合うことになる。
デジタルになって機材の敷居が下がって以降、前述のオリンパスのサンヨンのような機材がアマチュアでも普通に買える時代ということもあり、技術的な部分もプロだからアマよりも優秀ということでもないのは、TwitterでもInstagramでも、昨今の写真が公開できるSNSを眺めていればすぐに判る話だ。
そもそも写真趣味として裾野が広がってしまった..恐らくバードウォッチング人口より野鳥カメラマン人口のほうが多い..おかげで、写真を眺めるよりも写真を撮ることのほうが主流になってしまった現実が、野鳥写真を飯のタネにするプロに追い打ちをかけている。
これは写真撮影全体に言えることだが、その時そこにいること、現場第一主義がいかに大事であるかということに他ならない。逆に言えば、言葉は悪いが目の前にいる普通種を、いかに非日常の視点で捉えるかというような、写真家自身の持つユニーク性、オリジナリティが必要になるわけだ。
そういう意味では、水中氏のゴイサギを捉えた作品群は、シチュエーションとタイミングを十分に見計らった、言わば計算づくでの結果であり、まさにプロの仕事と言えよう。
鳥がいるその空気感を匂わせるような光と空間の使い方が上手い中村氏、鳥と航空機という空を飛ぶ者同士の飛翔をブレなくクリアに写し止める卓越した技術を持つ中野氏、空を飛ぶ鳥に国境はないとばかりに海外取材にも果敢に飛び出す若い菅原氏。
今回の写真展では、そんな四者四様の仕事に挑む姿勢を、少し垣間見させてもらったような気がした。
LUMIX G9 PRO / LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm F4.0-6.3 ASPH. POWER O.I.S. / カルガモ
かくいう拙者も、元々鳥に興味を持ってこの世界に入った経緯がある。池中玄太の影響と言えば、我々の世代の野鳥カメラマンあるあるであろうw
程なくして嶋田忠氏や友人の影響で撮影も始め、一時は視野狭く鳥しか撮ってなかったこともあるが、星野道夫氏の作品とエッセイに出会って以降、生態系とその多様性という命のつながりを意識するようになった。
そして自然を一歩引いて観る視点を持つようになった結果、鳥も生きものの一種という考えに変わり、自然と生きものという大局的な視点で撮影をするようになり、現在に至る次第。
ちなみに嶋田氏に関して、ちょうど十年前に昔のブログでそんな記事を書いていて、ちょっと懐かしいw
■野生の瞬間
こちらは星野道夫氏について。いやホント惜しい人を亡くした..
■星野道夫という写真家