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岩手北上高地のイヌワシ(英名:Golden Eagle)が、今まさに存亡の危機にある。

本来エコを目指すべき自然再生エネルギー開発の名のもとに、ニホンイヌワシという絶滅危惧種の生息地そのものが脅かされそうとしている。

北上高地は、国指定の天然記念物でもあるイヌワシの国内でも有数の生息地である。その生息地内に数十基もの巨大な風車タワーが建設されれば、2008年に国内初のイヌワシ衝突死を起こした釜石風発の二の舞いが懸念され、バードストライク問題の再発を予見せざるを得ない。

ニホンイヌワシの岩手個体群の消失を止めることは、無機質な風車が回り続ける異様な光景から、イーハトーブの故郷を守ることにほかならない。

Save the Golden Eagles, Save the Ihatov.

天気が下り坂で、今日の東京はどんより曇り空。そんなこんなで、関係省庁に意見書を提出すべく、終日霞が関巡りであった。

この年末の忙しい時期、我々の切実なる思いに、イヌワシの未来に、真摯に耳を傾けてくれた関係者にまずは感謝したい。

日本イヌワシ研究会:(仮称)宮古岩泉風力発電事業」に対する意見書

換羽

2016/7/20

列島の半分が梅雨明けらしい。赤城高原もここ数日は天気が良く、仕事場からも上越国境の雄姿が良く見えるようになった。

晴れの日が続くからどうだということではないようで、関東以北はまだ梅雨明けではないのだが、概ねこの20日を過ぎると気分は盛夏へと向かう。

キーボードを叩く手を休め、その高原の青空をモニター越しにぼんやりと眺めていると、大きめの鳥影が2つ、クルクルと雲間をソアリングしているのが目に入る。

近所のオオタカもノスリもすでに巣立っているが、連日のように我が家の頭上に姿を見せては、何羽かでピィェー、ピィェーと鳴き交わしているのはノスリの親子である。

若鳥が餌をねだる時もあれば、親がネズミらしきものを掴んで飛んできて子供らを呼ぶ時もあり、寄ると触ると賑やかな連中である。同じ猛禽類とは言っても、その点ではステルスなオオタカ親子とはだいぶ印象は異なる。

とは言え、そんなノスリ親子の巣立ちの賑やかさが、気分的に梅雨明けを連想させるのも事実ではある。

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近所の演習林で真新しい大きな羽を拾った。巣からは少し離れているが、鷹斑からみてノスリの風切羽のようだ。

猛禽類にとって夏場は換羽の季節である。水鳥のように一気に換羽する種もいるが、飛ぶことがイコール食べることに直結する猛禽類の場合、年をまたいで少しずつ部分的に換羽するのである。

一時的とは言え大量に羽が抜けるとそもそも飛べないということもあるが、子育てをしている忙しい時期に、換羽にエネルギーを割いている余裕はないのかもしれない。

育児に追われる親にとって、自分の身なりに構っていられない事情は、人もタカも同じであるということだ。

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関東にも米所

2016/6/24

南関東のライスフィールドに滞在中。米所と言えば新潟や東北を思い浮かべるが、関東にも旨い米を生産する地域がいくつかある。

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独特の谷戸に広がる水田地帯には、オオタカと並んで里山の猛禽を代表するサシバが多く見られ、今は育雛期のまっただ中である。

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ご近所ノスリ

2016/4/21

不意に仕事場の窓の外を大きな影が横切った。

慌てて窓辺に常備してある双眼鏡で追いかけると、カラスに追われながら逃げるノスリであった。おそらく近所の雑木林で繁殖中のペアのどちらかだろう。

時々家の前の電柱に留まっていることもあり、馴染みといえば馴染みの個体である。先日もオオタカの営巣確認に行った帰りに近くに寄ってみたが、結構な勢いで鳴いて威嚇されてしまったので、こちらも繁殖は順調のようである。

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100mほど離れた畑を挟んだ枯れ杉に留まって、しばらくハシボソガラスにまとわりつかれていたが、カラスが飽きて?去った後、窓辺に望遠レンズを付き出してしばらく様子を見ていると、クルッと首を横に向けた。

一見すると左の方を見ているように見えるが、鳥が横を向いている時は、案外こちらを気にしていることが多い。

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イノシシやシカなど野生動物は人の匂いには敏感で、猟師の仕掛けたワナに露骨に人の匂い付いていたりするとすぐに見破るという。

しかし人工物などは抵抗なくむしろ積極的に利用しているフシがある。タヌキは廃屋を、ハクビシンやムササビは山小屋や神社仏閣などを、ツバメやスズメなら人が住んでいる家に巣を造るといった具合に。

ハヤブサの仲間が都市部の高層建築物に営巣する例は世界的にも以前から知られているが、同じワシタカなど猛禽類には人工物を積極的に利用して生活している種が多い。

トビなどは休息のために鉄塔..高圧線の支柱や橋の欄干、携帯アンテナなど..によく留まるが、オオタカやハヤブサそれにノスリなどは、ハンティング行為の一部として探餌を行う際に頻繁に鉄塔に留まる。営巣地が近ければ誇示行動の一部でも同様だ。

ワシタカの仲間は、飛びながら餌を探すタイプと待ち伏せして餌を探すタイプに分けられる。例として挙げた鉄塔の類を利用するのはどちらかと言うと後者に多く見られ、チュウヒなど草原性のタカはほとんど鉄塔などに留まることはない。

もちろん何事にも例外はあり、ハイタカ属のハイタカやツミはオオタカほどは人工物に留まることは少ない。同じ待ち伏せ猟をするにしても、目立つ場所に留まるのではなく、どちらかと言うと雑木林の林縁部など枝先でひっそりと探餌することが多いようだ。

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山間部を通る高圧線の鉄塔に留まって探餌するクマタカ。

クマタカは日本産のタカの仲間では最大で、その昔は深山幽谷にすむ希少な生きものと考えられていたが、実際は意外に人里周辺でも生活していることが知られている。

さらに鉄塔大好き猛禽と言っても言い過ぎではないほど、鉄塔に留まる姿を季節を問わずよく見かける。餌を探すのも鉄塔、巣を見張るのも鉄塔、交尾をするのも鉄塔、休息するのも鉄塔だったりして、まったく人工物に頓着しない..ただしダムやスキー場などの構造物にはほとんど近づかない..性格なのである。

これに対して徹底的に人工物を嫌うのが天狗様ことイヌワシだ。テリトリー内の見晴らしの良い場所に探餌に都合の良い鉄塔が立っていても、わざわざ近くの尾根上の枯松に留まっていることが多い。

北米のイヌワシには風発の風車に留まる強者がいるらしいので、イヌワシといえど絶対という話ではないのだが、そこら辺は土地柄お国柄の違いなのか、よく判っていない。

と言うことで、一部の種を除けば、野生動物といえど人工物を積極的に利用するのである。天敵ともいうべき人の手による人工物とどこまで認識して、背に腹は代えられないとばかりに割り切っているのか、そもそも我々が思うほどは無機物、有機物の別け隔てがないのか、その辺りは定かで無い。

で、我々は今日もまた、視界に入る鉄塔を端から順に眺めることになる..

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一富士三鳶

2016/1/3
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暖冬の影響で暖かい正月を迎えているが、その分日中はヘイズも多い。冬晴れで全体的に視界は良いのだが、遠景はやはり辛い。富士山も肉眼ではうっすらしていて、言われなければ判らないだろう。

今年も一富士二鷹を狙ったが、残念ながら飛んでいたのはトビばかり。いつかはタカ..トビも猛禽類の仲間だがここはやはりハイタカ属が望ましい..を一緒のフレームに収めたいものである。

え?ワシ?いやいやそれはさすがにねぇ(笑)。

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先日の船津伝次平の記事で、昔の山は禿山状態と書いたが、実はその話は天狗様、つまりイヌワシの生息環境とも密接な関係にある。

イヌワシは晩秋から冬の落葉期と木々の葉が転用する前の春は、比較的谷筋の見通しの良い斜面などで狩りを行う。この時期の主な獲物は、林縁部周辺で採餌活動を行うノウサギやヤマドリを中心に、テンなど中型の生きものであることが多い。

そして季節が進み葉が転用すると、繁殖中であれば主な餌動物がヘビ類に変わってくる。イヌワシは翼開長が2m近くあり、森や林に入ることを得意としないため、谷筋や岩場などの開けた空間を見つけて狩りを行う。この辺りは餌動物の傾向が被るクマタカとはかなり事情が異なる。グライダーのような翼型のイヌワシに対し、クマタカは翼開長が短く翼面も幅広な形状であるため、狭い空間を苦にせず移動することができるのだ。

イヌワシの話に戻るが、繁殖をしていない個体の場合は営巣地に執着しないため、開けた草地の多い標高の高い森林限界付近などで狩りを行う。その昔、それがイヌワシは高山の鳥と言われていた所以だが、そもそもイヌワシは旧北区出身であり、大陸系亜種がステップや亜高山帯を生息地としていることからもそのことは見て取れる。

以上のことから、イヌワシが生息し易い環境というのは、たとえうっぺいした森や林であっても、雪崩草地や倒木によるギャップ、茅場環境など開けた空間が適度に点在する必要性があるということになる。

その点、人為的ではあっても、高標高地の牧場などは草地環境であるため、イヌワシにとっては非繁殖期の狩場としての利用価値が高いことを意味し、恐らくは現状でも狩場として活用するのに適していると思われる。

通常、日本の湿潤な環境下では開けた空間は数年で低木性の植物に覆われてしまい、イヌワシの狩場としてしては使いづらくなってしまうが、先の牧場のような場所は人の手によって手入れが行われるので、継続性の高い狩場が整備されていることになる。その一例として見れば、岩手など東北の高地にワシが多いのにはそんな理由もある。

イヌワシは現状では生息数が減少の一途をたどっているが、これは人が山や森を生活の場として使わなくなったことにも原因の一端があり、実は薪炭林や茅場利用が多く見られた江戸時代から戦前戦後の人為的環境下のほうが、彼らにとっては住みやすかったのではないかと考えられている。

自然を守る=森の木々を伐らない、という図式は実はワシにとってはあまり都合が良くなく、木々を伐採して森を人為的に再生させることのほうがむしろ好ましい..奥山の自然林を伐るという意味ではなく、あくまで人工林の手入れのことを指す..のである。

という理由から、我々がイヌワシの生息地を保全していくために必要な施策は、人が適度に山や森を利用していくことだと考えている。

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今の時期は新たな情報を求めて伐採地ハンターと化す。

先週まで比較的暖かったのだが、今週に入って寒風吹きすさぶ冬らしい雰囲気になってきた。写真の伐採地は林道を上り詰めないとアプローチできないが、上越国境の山々を見ている限り、ここもすでに雪景色になっているだろう。

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青い羽

2015/4/21

近所で繁殖中のオオタカの様子を見に行ってきた。

月初にはやる気満々の様子だったので、あまり露骨には近づけず、林縁からそっと双眼鏡でのぞき込むと、雌が巣内に座っている様子が判った。何となくこちらを見ているような気がした..距離もあって枝越しなのでハッキリとは判らない..ので、念のためすぐに退散してきた。

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農道伝いにアカマツの営巣林から戻る途中、杉林の林縁に近い林床でカケスの羽を見つけた。周囲に羽毛が散乱していたので、何者かに捕食されたようだ。オオタカの巣からは150mほど離れているが、まあ十中八九、犯人はオオタカで間違いないだろう。

それにしても、カケスのこの部位の羽はいつ見ても美しい。初列の雨覆のようでもあるが、形状からして小翼羽だろうか。

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鷹の目

2015/3/20

何事も見落としなく探す様や鋭い目つきのことを鷹の目..実際の用法では鵜の目鷹の目が正しい..と表現するが、当のタカの目はイメージするほどは鋭いこともなく、眼球というくらいなので当たり前だが他の生きもの同様に目は丸い。

一般にイメージする鷹の目は、眼球そのものよりも眼窩や過眼線などその周辺を含めた形状を指す。そいう意味では、小鳥などに比べ同じ鳥類でもタカの仲間は頭部に対する同部位の占める割合が多いため、大きな嘴の形状や獲物を凝視する際の動きも相まって、それは言葉通りの鷹の目のイメージに適合する。

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虹彩の色が暗色の黒目がちで、遠目にはどんぐり眼に見えるノスリも、このくらい近いとさすがに瞳孔がわかるため、まさに鷹の目だ。よく見れば、その鋭く獲物を映す目には、呑気な撮影者の姿が写り込んでいるのが判る。

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鷲瞰図

2014/10/6

GoPro HERO4はとうとう4K30Pまで到達してしまった。4Kで30Pはいわゆるナンチャッテ4Kに他ならないが、あの大きさであっさり実現されると、肩を並べられたm4/3一族最大サイズのGH4の立場は何処へ(笑)。

アクションカムの名の通り、1080/60PがGoProの本来の立ち位置だろう。さらに720ながら120Pがイケるので、地上波ならハイスピード撮影もバッチリOKだ。というか業界的には待ちに待ったスペックだろうね。やはり激しく動く状態..GoProは動くものを撮るカメラではない..で撮影するなら最低でも60Pは必要だから。

しかもSilver Editionには背面にタッチ操作可能な液晶モニターまで搭載。スマホがあればWi-Fiで飛ばせるとはいえ、この辺りはバッテリーの持続時間との兼ね合いもだろうが、ある無いでは雲泥の差がある撮影分野もあるので、その恩恵はいかばかりか。

そして、いつも楽しませてくれるGoPro映像だが、とうとう天狗様にも背負わせたくれた。

小型のハヤブサなどでは激しく羽ばたくせいもあってバタバタする映像も、大型のワシになるとさすがにビタっと安定して映るのはさすが。流行りのドローン映像もさることながら、やはり鳥自身に背負わせて撮ってもらうのには敵わないね。これこそまさに鳥瞰ならぬ鷲瞰図だ。

さらに天狗様ではないがオマケを2つ。

風切り音がイイね!

 

20141006

今日は午前中は雨模様であったが、台風18号はあっという間に通り過ぎて行ってしまって、お昼には晴れて暑さがぶり返してきた。明日からは秋晴れに戻るようだが、すぐまた19号がやって来るようで外ロケは頭が痛い。