昔から焦点距離50mmは標準レンズと言われてきた。距離感で言えば中望遠である70〜80mm付近だが、画角的に人の目の視界に近いのは対角46°の50mmであろう。
ズームレンズ全盛の今でも、各メーカーとも自社レンズの指標的存在として50mm単焦点をラインナップしており、ZeissのPlanar辺りを除けばレンズ設計でも無理をすることのないレトロなガウス型が多く、F1.2とかF1.4など明るいレンズが多いのも特徴。
F3.5とかF5.6とか、今時のデジタルカメラの高感度性能なら日常使用で何ら問題ないが、やはりF1.4の明るさは捨てがたいし、何より近距離でのボケが全然違う。
FUJIFILM X-T2 / XF16mm F1.4 R WR
ライカ判フルサイズ..このフルサイズという表現には抵抗があるがその辺りはまた別の機会に..の50mmは、APS-Cのセンサーで言えば35mmが画角的に同等となり、当時フジのX-T1と一緒に最初に手に入れたこのXF35/f1.4がそれに当たる。
カメラボディと一緒に単焦点の標準レンズを買うなど、初めて買ったカメラであるキヤノンAE-1以来というくらい久しい話だったが、このXF35/f1.4の作例を海外サイトで見たのがフジのカメラとの馴れ初めであることは間違いない。
今でもキヤノンのFD50/f1.4とナイコンのAiニッコール50/f1.4は持っているが、この当時のF1.4はただ明るいというだけで、正直なところ実際の撮影では使うことをためらう描画性能であった。特に周辺画質は酷いものである。
その点、非球面レンズを用いるなどして、アウトフォーカスのボケにこだわって設計しているとメーカーが喧伝するとおり、XF35/f1.4は開放から十分使える周辺画質性能を持っているので、特に近距離でのマクロ撮影的な使い方で出番が多い。
個人的には、昆虫や花などをクローズアップする撮り方をほぼしないので、マクロ撮影といっても撮影倍率にこだわることはなく、野外ではむしろこの程度のワーキングディスタンスが丁度良い。
仕事では圧倒的にXF16-55/f2.8だが、日常的には同じF1.4ということもあってXF16/f1.4とのコンビが多い。同社の35mmにはより小型のF2モデルも存在し、シャープさでは後発で最新設計のF2のほうが良いという話であるが、C社..なぜここで急に隠語w..EOSを使っている身としてはF1.4モデルでも十分小型である。
巷ではジーコジーコと音を立ててAFが駆動する様が難点と言われているようだが、スナップ用途にはF2モデルが存在するし、個人的にこのレンズに速写性を求めてないのでそこは問題ではない。アウトフォーカスのとろけるようななだらかなボケ方は、その昔好んで使っていたAME(Leica APO-MACRO-ELMARIT 100/f2.8)に匹敵するほど秀逸なのである。
FUJIFILM X-T2 / XF35mm F1.4 R
これらは先月の在庫から。左はF2まで絞り込んで撮影。右はF1.4開放で。うまい具合に切り株に刺さっていた落果、というのは嘘でw、落ちていたいがを適当に置いて演出したもの。
以下余談だが、日本人は箱庭や枯山水を好む反面、なぜかヤラセ..人為的にある行為または事象を再現したもの..を否定的に見る人が多い。生きもの系で言えば餌付け撮影などがまさにそれだ。
逆に海外では普通に行われていることであり、BBC辺りの撮影方法を知ったら、ヤラセを否定する連中は卒倒するのではないだろうか。ヤラセ=後ろめたいではなく、それは演出であると理解すれば良いのである。
藤原の大先輩など、エンターテインメントだと常々言ってはばからないが、大きなインパクトや不可逆的に回復不能なほど現状変更しない限り、映像作家として演出は必要だと思うのである。何事も程度の問題なのだ。