個人的にシダと聞いて想像するイメージは原始的なものだ。そう、ジュラシックパークの森のなかの1シーンのようなあんな感じ。
一般的な種子植物は種から発芽し花を咲かせて実をなすという成長過程を経るが、シダ植物は胞子によって繁殖する点で、より原始的なコケ類に近い。
ただ、根から水分を吸い上げて葉に送るという構造..総称して維管束植物という..を持つ点で種子植物に近いとも言えるため、コケ類と種子植物の中間に位置する植物となる。
光合成をするので日光は必要だが、基本的に日陰で高温多湿を好む。よく見かける場所として、林床にあまり手入れの行き届いていない山間のスギやヒノキの植林地が挙げらる。
例外的に日当たりの良い乾燥した裸地を好む仲間もいて、ゼンマイ・ワラビ・コゴミなどは山菜として馴染みが深いだろう。
シダの仲間は国内では約600種ほど見られるそうだが、正直なところパッと見ではよく見分けがつかない。葉の形などまったく異なるが、スギナ..いわゆるツクシの地下茎..もシダ類同様に維管束植物である。
FUJIFILM X-H1 / XF16-55mm F2.8 R LM WR / PROVIA / シダの仲間(左)、スギナの蒸散作用(右)
そんなシダの仲間にシムライノデという種類があるそうで、環境省のレッドデータリストで我らが天狗様と同じ「近い将来、野生での絶滅の危険性が高い」とされる絶滅危惧IB類に分類されている。
東京都内のスギの植林地にそのシムライノデの自生地がわずかに残されていたが、その森を都の公益法人が3年ほど前に伐採してしまったため、乾燥化が進みほとんどが枯れてしまったということだ。
植林地としての手入れを行い、管理する森を守るという仕事は林業を行う上で重要であるが、そこに自生する貴重な植物の存在にまで注意が回らなかったことが今回の原因だろう。
件の公益法人はシムライノデのことを知らなかったと言っているようだが、事前に環境調査などを実施してはいない。ただ、そもそもそこに貴重な動植物が生息している事実を知らなければ、植林地という状況からして環境調査を行うのはなかなか難しいというのは理解できなくもない。
盗掘や不法採集、それに密猟を考えると軽々に情報を共有するのは難しいのだが、こういった希少な生きものの生息情報を安全に共有できる仕組みづくりが必要な時期に来ているのは間違いない。
それは我らが天狗様にも当てはまる喫緊の課題の1つと言えよう。