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谷川冠雪

2024/11/21

ブルーな横顔

2024/10/4

道東のオホーツク海沿岸に流氷がやって来て、新コロナ禍とは言えど観光シーズン真っ盛りの中、先月小清水町で回収されたオオワシの死骸からH5型の鳥インフルが検出された。

オオワシから検出されたのは国内では初めてのことだが、すでにクマタカやオジロワシでは例があるので、取り立てて驚くには値しない。

オオワシは国内での繁殖例はなく、冬季に越冬のためにサハリンやカムチャッカから渡ってくる。今の季節に道東を訪れれば数はそれなりに見かけるのでありがたみが薄れる感はあるが、生息地は極東だけに限られており、生息数も少ない世界的に希少種の扱いである。

そんなオオワシやオジロワシを餌で流氷上に集め、観光船で撮影させるツアーが人気だが、鳥インフルが出ているとなると催行自体が危ういものとなるだろう。すでに阿寒のタンチョウでは数年前から警戒が続いており、一部の施設では給餌行為をやめているところもある。

餌資源が不足する時期に給餌で鳥を集めるのはハクチョウ類などで昔から行われきており、度々問題視されているが、希少種の場合は特に注意が必要になろう。

国内では他には九州出水のナベヅル・マナヅルや、意図的な餌付けではないが宮城の伊豆沼周辺に集まるマガンなどの一極集中は、一歩間違えば全滅という事態も十分にありうる。

多くの生きものは繁殖期は単独またはつがい単位で行動するが、特に鳥類が冬は群れる傾向があり、餌があればそれは尚更強まる。そろそろこういった観光目的で生き物を集めるやり方は、見直す時期に来ているのではなかろうか。

Canon EOS-1D MarkIII / EF28-300mm F3.5-5.6L IS USM

流氷の中を進む観光船。露出補正で明るく仕上げているが、この時はまだ夜明け前。乗船しているのはほとんど海ワシ目当てのカメラマンたち。

この後、適当な沖合で流氷上にスケソウダラの切り身を投げ置いて、オオワシ・オジロワシが集まるのを待つと言う流れで、SNS界隈でよく見かける流氷バックの写真は十中八九この観光船からの撮影だ。

拙者も当時何度か乗船しているが、撮りたかったのは餌に群がる海ワシの姿ではなく、スケソウ漁船団..出漁の時間帯が同じなので並走するシーンを狙えるのだ..とその網からこぼれ落ちる魚のおこぼれを狙う海ワシだった。

もちろん目の前にオオワシやオジロワシが飛んで来れば撮りはするが、あくまで狙っていたのは豊饒の海である根室海峡に集まる海ワシたちであり、羅臼沖の海では漁船の絵は外せなかったからに他ならない。

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オオワシと言えば極東を代表する世界最大の海ワシで、ロシア沿海州や千島列島で繁殖し、冬季に日本の北海道や一部本州に渡ってきて越冬することで知られている。

国内では天狗様と並んで国指定の天然記念物に指定されており、同様に国内の希少野生動植物種でもあり、世界的に見ても貴重な絶滅危惧種である。

冬季に北海道を訪れる欧米のバードウォッチャーには絶大な人気があり、知の果てたる日出る国を訪れたなら必ず観察したいライフリストと言っても過言ではないだろう。

先頃そんな極東の固有種が、東は東でも数千キロ離れたよもやよもやの米国東海岸のマサチューセッツ州に姿を現したと言うから、彼の地は騒然とした空気に包まれているのは想像に難くない。

国内でもここ2年ほど続けてハクトウワシが道東で越冬する事例が出ているが、世界中どこででもこの手のイレギュラー的な出現は起きているのだろうと推察できる。

たとえ一度や二度は例外で合ったとしても、いずれそれが続けば当たり前の日常となるわけで、生きものの分散というのは常にそう言ったことの繰り返しということなのだ。

さて、果たして件のオオワシは来年も米東海岸を訪れるのか、ハクトウワシは今年も道東で越冬するのか、何れなかなかに妙味の尽きない話である。

Canon EOS-1D MarkIII / EF600mm F4L IS II USM

いかにも威風堂々としているその容姿だが、主に魚食のオオワシやオジロワシはトビと同じと蔑む天狗様仲間は結構いて、ネタとしてすら扱われないフシがあるw

個人的にはオオワシ・オジロワシを目当てに渡道していた時期があって、それはちょうど天狗様の抱卵期と重なり、代わりにと言ってはなんだがその期間をその取材に充てていたからである。

彼らの行動と生活史は天狗様とは異なり、確かに魚や動物の死体に大きく依存している部分があるが、実際に道東を訪れ、数千羽を数える巨大なワシが群れを成して越冬個体群を維持している環境を見てみて、道東の持つ餌資源のポテンシャルと彼らの関係性に大いに興味を持ったことが、その後十年の取材につながったと言えよう。

天狗様は種としての魅力に惹かれるわけだが、個体群が季節に合わせて移動しまた渡去するという連綿と続く季節移動には、食物連鎖というエコシステム同様に強く惹かれるものがあるのだ。

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長寿ワシ

2020/11/25

琵琶湖の湖北に今年もオオワシが渡ってきたと知らせが届いた。毎年観察している知人によれば今年も同じ個体であることが確認できたということなので、1998年以来かれこれ23年連続の渡来となる。

個人的には1999年に同個体を観察した記録がフィールドノートに記載があって、写真も撮っているはずなのだがちょっと探した限り見つけられず。当時はフィルムなので大箱の中のどこかにあるはず。

ノートにはすでに成鳥とあるので、少なく見積もっても29歳程度はいっている..成鳥になるのに5〜6年はかかる..と思われ、もしかしたら30歳を超えている可能性もあるかな。

先日のアホウドリもそうだが、大型の鳥類は比較的寿命が長い種が多く、オオワシだと飼育下では札幌の円山動物園で2002年に亡くなった個体が52歳という例があるが、それでも野生下で長寿を全うするのはなかなか厳しいので、30歳前後ともなるとやはり長生きの部類と言えるだろう。

それに継続して観察されていることで個体識別もしっかり行えるので、こうした貴重なデータが取れることになる。やはり地道にでも調査は続けていくことに意味があるので、先般話題になった気象庁の生物季節観測中止の件は見直してほしいと思うぞ。

ちなみに我らが天狗様ことイヌワシでも、我々研究会の先輩たちの代から地道に継続して続けられてきている調査によって、野生下の個体で年齢を確認できているケースがいくつかある。それらの例ではいずれも30歳を超えており、中には40年近い個体がいることも分かっている。

長く生きるためには怪我も病気もなくまずは健康であることが条件となるが、と同時に十分な餌資源の確保ができていることの証でもあるので、個体の情報もさることながら生息地や越冬地の環境の変化についてもデータを取り続けることが肝要であろう。

Canon EOS-1D MarkII N / EF28-300mm F3.5-5.6L IS USM

晩秋の知床半島の海岸段丘上を、海風に煽られながら知床岬目指して飛ぶオオワシ。11月も中旬ともなるとオオワシ・オジロワシの秋の渡りの季節である。

オオワシ・オジロワシの秋の渡りのコースは、概ねサハリンから宗谷岬を経て北海道へ入ってくる個体が多い。

多くはオホーツク海沿岸に沿って南下、知床半島を通過して道東を中心とした道内の越冬地に向かうことになるが、湾や不凍河川のサケ・マスなど餌量に依存することになるので、状況によってはさらに分散し、本州方面に降りてくる個体も出てくる。

ただ、件の湖北の個体は、到来時期からして北海道に留まることなく本州の日本海側を琵琶湖を目指して直接やって来ていると思われる。

23年も無事に越冬できている成功体験は、野生動物にとっても相当に大きな魅力と見ることができるということだ。

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大鷲

2017/3/18

オジロワシが捕まえた(または拾った)餌を運んでいると、どこかともなく現れてその上前を跳ねていくのがオオワシだ。我らがイヌワシより一回り大きいオジロワシの、さらにその上をいく世界最大級のワシである。

翼開長2.5mにもなるその巨大さに物を言わせてなんでもブイブイ出来そうなもんだが、意外にその生態はセコイ猛禽である。でもそれをとやかく言ってはいけない。強いものが生き残る、それが自然界の摂理なのである。

ちなみに科学忍者隊ガッチャマンのリーダーに大鷲の健というのがいたが、あの大鷲がこのオオワシなのかは不明だ。

知床の豊饒の海のみなもとが流氷だ。その流氷原をバックに滑空する姿は実に絵になる。オオワシもオジロワシと並んで、冬の北海道を代表する生きものだ。

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