東は東でもよもやの東海岸
オオワシと言えば極東を代表する世界最大の海ワシで、ロシア沿海州や千島列島で繁殖し、冬季に日本の北海道や一部本州に渡ってきて越冬することで知られている。
国内では天狗様と並んで国指定の天然記念物に指定されており、同様に国内の希少野生動植物種でもあり、世界的に見ても貴重な絶滅危惧種である。
冬季に北海道を訪れる欧米のバードウォッチャーには絶大な人気があり、知の果てたる日出る国を訪れたなら必ず観察したいライフリストと言っても過言ではないだろう。
先頃そんな極東の固有種が、東は東でも数千キロ離れたよもやよもやの米国東海岸のマサチューセッツ州に姿を現したと言うから、彼の地は騒然とした空気に包まれているのは想像に難くない。
国内でもここ2年ほど続けてハクトウワシが道東で越冬する事例が出ているが、世界中どこででもこの手のイレギュラー的な出現は起きているのだろうと推察できる。
たとえ一度や二度は例外で合ったとしても、いずれそれが続けば当たり前の日常となるわけで、生きものの分散というのは常にそう言ったことの繰り返しということなのだ。
さて、果たして件のオオワシは来年も米東海岸を訪れるのか、ハクトウワシは今年も道東で越冬するのか、何れなかなかに妙味の尽きない話である。
いかにも威風堂々としているその容姿だが、主に魚食のオオワシやオジロワシはトビと同じと蔑む天狗様仲間は結構いて、ネタとしてすら扱われないフシがあるw
個人的にはオオワシ・オジロワシを目当てに渡道していた時期があって、それはちょうど天狗様の抱卵期と重なり、代わりにと言ってはなんだがその期間をその取材に充てていたからである。
彼らの行動と生活史は天狗様とは異なり、確かに魚や動物の死体に大きく依存している部分があるが、実際に道東を訪れ、数千羽を数える巨大なワシが群れを成して越冬個体群を維持している環境を見てみて、道東の持つ餌資源のポテンシャルと彼らの関係性に大いに興味を持ったことが、その後十年の取材につながったと言えよう。
天狗様は種としての魅力に惹かれるわけだが、個体群が季節に合わせて移動しまた渡去するという連綿と続く季節移動には、食物連鎖というエコシステム同様に強く惹かれるものがあるのだ。