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北海道には本州のツキノワグマとは別にエゾヒグマが生息している。ブラキストン線である津軽海峡を挟んで住み分けしているのだが、本州が大陸とつながっていた時代には、本州にもヒグマは生息していたのだ。その名残というか、その当時の生物相は現在のロシア沿海州の森に見ることができる。

先日「ブナの実を好むツキノワグマ」のイメージをステレオタイプと書いたが、実は北海道のヒグマにも「サケやマスを獲って食べる」という典型的なイメージがある。これは特にカメラマンに多く見られる傾向で、世界自然遺産の知床には今の時期は毎日のように大砲抱えたサンデー毎日なカメラマンで賑わっている河川がある。

この9月にヒグマの食性分析について北大の成果発表があったが、それによれば、知床に生息するヒグマ全体の食性に対するサケの貢献度はわずか5%とのことだ。世界自然遺産として保護されている知床でさえその数値なのだから、本州に比べてサケの遡上が多い北海道といえど全道的にはさらに低いことは容易に想像がつく。つまり、サケを獲っている姿はヒグマのほんの一面、それも限られた場所に住む個体に過ぎず、大半のヒグマはツキノワグマ同様に強い雑食性であるということだ。

20140924
左上:知床の河川でサケを捕まえるヒグマ
右上:アラスカ州ブルックス滝周辺でサーモンを狙うグリズリー
下:サケ・マスを狙うクマを狙うカメラマン(最盛期はこの比ではない)

確かに川に入ってサケを捕食する姿は豪快であり、写真として絵にもなりやすいのだが、それはロシアや北米でのイメージ..それとて河川や海岸、湖沼周辺の個体群に限られる..であり、日本のヒグマの正確なイメージを現すものではないのだ。知床に集まっている連中がそんなことまで考えて撮影しているとはもちろん思ってはいないが、見る側も正確な情報を知っておかないと、往々にして上っ面だけ、イメージだけの価値観に囚われてしまい、クマの本質を見失ってしまうだろう。

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20140923

先日、路上に落ちていた青ドングリを写真を撮るために集め、そのまま放置しておいたのだが、今朝通ってみるとキレイに無くなっていた。昨日はクマの話を引き合いに出したが、ドングリの場合はネズミやリス、ムササビにカケスなども好んで食べる。地面に落ちていればタヌキやキツネもしかり。

いずれにせよ誰が食べたか運んだかは不明だが、そのすぐ脇にはクリのいがが一つ置かれていた。防風林脇なのでクリも自生はしているが、現場近くには見当たらないため、あえて置かれていたという表現をしてみた。誰かがクリを運ぶ途中でドングリの小山を見つけ、クリの代わりに運んでいったと考えるのは、そりゃちと出来すぎかな(笑)。

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林野庁の調査によれば、ブナの結実予測ではこの秋は不作なんだそうだ。もっとも昨年は数年の一度の豊作年だったので、この春の調査結果を聞かずとも素人にもその辺は予想がつく。

この手の話がある度に書くことだが、そもそもクマはブナの実だけを好物として食べているわけではない。基本的に何でも食べる雑食である。クマはその時、沢山ある食べ物を、集中的に食べる傾向が強いため、苦労して探しまわった果てに見つけた食べ物に強く執着するのだ。

夏の終わりから秋にかけて、人里に「出没」するとか、大量「発生」するとかの表現をよく耳にするが、クマにしてみれば餌探しの過程でたまたま通りがかり、偶然?そこに食べ物があったので食べていますって感じなのが実情だ。地域によって当然その食性は異なるが、人里周りで柿の実が熟れていれば柿の実を、山際にクリがなっていればクリの実を、山中にドングリが結実していればどんぐりを、養魚場にマスが泳いでればマスを、川にサケが遡上していればサケ(これは特殊な例だが)を、あればあったなりに腹一杯になるまで食べるのである。

何が言いたいのかといえば、すべてのクマがブナの実を欲して動き回っているのではないということだ。クマの食性と餌資源となる植生とは必ずしも一致しないのである。それをステレオタイプに、時にセンセーショナルに騒ぎ立てるのは見ていて滑稽でさえある。

20140922

先週末にちょっと風が強く吹いた影響だろう、農道上に青どんぐりが散乱していた。ブナだけでなくドングリも凶作に近いような話を聞くが、赤城高原では例年とそう変わらない。赤城高原は戦前より開拓で人が入っていたため、薪炭林やほだ木として活用された名残でコナラが多く見られる。写真のドングリもコナラのものだ。

クマがドングリを食べると聞いて、林床に落ちた茶色の成熟したドングリをイメージする人が多いが、クマが好んで食べるのは写真のようにまだ青いドングリである。夏から秋にかけて、ミズナラやコナラなどに登って青ドングリを枝から直接食べるのである。もちろん落ちたドングリも食べるが、まだ枝についた青いうちのほうが水分があって柔らかく、クマにとっては美味いはずである。

ちなみにその青ドングリを食べる過程でバキバキと枝を折って手繰り寄せ、食べ終わると尻の下に敷いて、という動作を一箇所で繰り返し行うため、クマがしばらくいた場所には枝が折り重なってまるで鳥の巣のようになることがある。実際そこでそのまま寝てしまうクマもいるため、それをクマ棚と呼んでいる。

まだ緑が濃い時期にクマ棚を探すのは難しいが、晩秋になって森が落葉し始めると簡単に見つけることができる。青葉がついた状態で枝を折られると、落葉期になっても折られた枝の葉は落ちずにそのまま枯れるため、遠目にも目立つのだ。

ちょっと前に関係者に聞いたのだが、うちの裏山(赤城山)で県がシカ駆除用に囲いわなを仕掛けるらしい。前橋市が協力ということで、旧富士見村周辺など南面側のようだ。囲いわなと言っても高さ2.5mで周囲が500m近くあるので、見た目は養鹿場のようになるだろうか。カウンターを装備したゲートを設けて、一定数に達するとゲートが自動的にロックされ、一網打尽になる仕掛けだ。

県内に限らず、もはやシカによる森林や農作物への被害が看過しておけない状況にある。ある程度の数まで増えれば逆に個体数は自然減になるのは間違いないが、その前に山と耕地が荒れ果てるのは必定である。猟師の手で1頭ずつ間引きなどというのは手ぬるいので、一定数を一気に捕獲して駆除するしかないだろう。先の囲いわなはその一つの手でもある。

県北では、日光の足尾周辺から県境を超えてシカが行き来しているのが、捕獲して発信機を付けた個体の行動から明らかになっている。貴重なシラネアオイが食害されている日光白根山周辺や、ミズバショウやニッコウキスゲ、ミツガシワなどが被害にあっている尾瀬周辺も対策は急務だ。夏を彩っていた湿原の花々の被害は、放置しておけば取り返しがつかなくなる。微妙なバランスの上に成り立って形成される自然環境は、一朝一夕に植生回復など見込めない。

シカを捕食する肉食獣が国内にいない以上、人の手で対処するしかないのが現実だ。北米の例を上げてオオカミを放せなどと寝言を言っている輩もいるが、クマ一匹出るだけで大騒ぎする状況で、集団で行動する大型肉食獣などどうして放せようか。そもそも野生のシカを捕食するなどと誰が保証するのだ。ハブ退治を目的に移入された奄美大島のマングースは、ハブでなくアマミノクロウサギを襲っているではないか。オオカミと野良犬が交雑して人を恐れないハイブリッドが台頭して、新たな鳥獣問題を引き起こすのは目に見えている。

シカはカモシカと異なり深雪を苦手としている。明治期の北海道で、大雪と大寒波によって大量のシカ(エゾシカ)が死んだことはよく知られた事実..これが引き金になってエゾオオカミもまた絶滅に向かう..だが、まだ記憶に新しい2月の大豪雪が、少なからずシカの数を減らすことにつながっているとわずかでも期待したいところだ。


20140910

早朝、Nさんちのレタス畑を横切って行くシカの牝を見かけた。食害だけでなく、こうして縦横に歩きまわって株を踏みつけるので、当然これらも被害のうちである。今日はたまたま1頭だけであったが、これから秋深まるまでシカの恋の季節が続くので、電気柵のない畑は要注意である。

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20140706

今朝は巣穴の反対側に張り込み、と思って近づいたら、すでに親ギツネが寝そべって休んでいた。本当はもう少し近付きたいのだが、農道脇から800mm使ってもこのくらいが限界。先に着いていればもう少し奥に入れるのだが。

ちょっと様子を見てから、動画を撮ろうと三脚出すために車外に出たら起きてしまった。すぐに立ち去るかと思ったが、そのまま犬座りをしてあくび数回と毛づくろいを行う。背後にある巣穴方向で鳴き声がしていたので、子ギツネの登場を期待したが、本日もここでタイムアウト。

本気で撮るならワイルドライフは腰を据えてかからないとダメだね、やっぱ。

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親ギツネ

2014/7/4

朝採りが一段落して静かになったので、キツネの様子見に。何しろジムニーを止めているだけで、回覧板でも回すがごとくすぐに知れ渡ってしまう土地柄なので、あまり近所で大っぴらにカメラを構えていられないのである(苦笑)。

20140704

一週間ほど前にチラッと見た時はだいぶ子ギツネも大きくなっていたので、もう巣穴の近くにはいないかもしれないと思っていたが、30分も待たずに親ギツネが姿を見せた。タヌキにしてもそうだが、外観からはまず雌雄の区別はつかないので、この個体がどっちなのかは不明。

車を止めたのは久しぶりだったので、警戒するかと思ったが、しばらく朝採り農夫たちが駐車していたスペースなので、そんなこともないようだった。むしろちょっと離れたところで作業していたトラクターを気にしていた様子。決まった時間にしか人が畑にいない時期なので、野生動物は案外したたかにコソコソ紛れて生活しているものである。

この後もう一回親が姿を見せたが、子供の姿も気配もなく。親が餌を運んで子供が取り合う、そんな光景を期待して待ってみたが、いつもの様にこちらがタイムアウトで引き上げとなった。

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海のクマ

2014/6/28

日本には生息していないが、シロクマのイメージとして動物園では馴染み深いホッキョクグマ。私がペンギンの仲間と並んで野生種として一度は観てみたいワイルドライフの筆頭である。

ホッキョクグマは20万年ぐらい前にヒグマから分かれた、ほ乳類としては比較的新しい種である。そういった事情からか、ヒグマとは見た目の印象はだいぶ違うものの、互いに交雑してもハイブリットとして生活していけるほどいまだに近縁であり、実際にそういった事例はカナダ北極圏では散見される。

餌資源をアザラシに依存するホッキョクグマが、その生活史ともども海に依存しているの知られた事実である。そんな彼らと陸棲のヒグマの接点が増えているということは、海で餌が獲りづらくなったことの裏返しでもあるわけだ。

地球温暖化の影響と言われるように、北極海で通年を通して氷が減少、または海の開ける時期が早まっている事実はここでは割愛するが、海に閉ざされる期間が短くなることは、北極海に航路を求める人間にとってはありがたいことであっても、その為に進化してきたホッキョクグマには迷惑千万な話であることは明白である。

このまま氷が減り続けると、再びヒグマに戻るか種として絶滅するか、そんな選択が彼らを待ち受けていることになる。訳あって分科した種が、その求めた環境の変化によって絶滅に向かうことは、地球の歴史の中で何度も繰り返されてきた事実ではあるが、我々人類の生活圏の拡大によって引き起こされるとするならば、ワイルドライフを愛するものとしては複雑な気持ちにならざるを得ない。

あくまでGoProのプロモーション映像だが、最近観たショートムービーとしては秀逸な出来だと思う。ホッキョクグマの学名「Ursus maritimus」は海のクマを意味するが、まさにそれが短い映像の中に表現されている。

ただ、この映像を見てホッキョクグマは単にお泳ぎが上手いクマなんだな、で終わってはいけない。どんなに泳ぎが上手かろうとも、海を終の住み処とするアザラシには到底及ばないのだ。ホッキョクグマが泳ぎに優れたクマであるのは、あくまで海氷間を移動するために習得した能力であり、これをもってアザラシを狩るわけではない。

もし、アザラシを狩るためには海が凍るという状況が必要なんだ、そんな深読みがこの映像からできるようになれば、ワイルドライフのその圧倒的な生きざまを映像に残すという作業自体、途方もなく手間のかかることだとしても、意味があることだと思えてくる。

20140628

旭山動物園のホッキョクグマ展示室の廊下に描かれた絵もまた秀逸だ。展示の斬新さに話題が集まる同園だが、そこに至る導線への配慮も忘れてはならないだろう。

夏ウサギ

2014/6/15

標高800m付近でもぼちぼち朝採りが始まっている。

先月までなら夜中から煌々と投光機で照らしていたが、日が延びたせいで4時頃にはヘッドランプだけで十分作業ができる。契約農家の場合、朝の開始は出荷時間によるわけだが、付近に棲む動物たちにとって、明け方前に必要以上に明るく且つ騒々しい朝採りは、まあ迷惑以外何ものでもないだろうな。


20140615

朝採り作業から逃げて来たわけではないだろうが、遠ざかるノウサギの足跡を発見。

ノウサギは冬季、積雪によってその存在を知るけものの代表格だが、無雪期でもこうして時々足跡を見かけることがある。乾いた畑や農道だとなかなか痕跡が残らないが、梅雨時の今なら、こうして泥に足を取られる姿を想像するのはそう難しいことでない。

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車に積みっぱなしだった装備品を片付けていたところ、無くしたと思っていたCFカードをサルベージした。

4月に撮影で出かけた際、カメラバッグに仕舞ったと思っていてそのまま見つけられずにいたのだが、リアシート下に置いてあったスライダードーリーの収納ケース内に落ちていたのを発見。もはや何が写っているのかさえ忘れていたが、中身を確認したら若いタヌキが写っていた。

20140612

珍しく真っ昼間から民家近くの休耕田をうろついていたのだが、不意に一点を凝視して立ち止まったところをカシャ。しばらく撮影の後、ビデオでも撮っておこうと静かに車から降りたところ、我に返ったように逃げていってしまった。動画撮影では三脚必須なので、こういうタイミングでチャンスをものにするのはなかなか難しい。

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で、タヌキが凝視していた場所に降りてみると、狙っていたのはアオダイショウだったようだ。タヌキの食事の邪魔をしてしまったようで申し訳なかったと思う反面、アオダイショウはひとまず命を拾ったことになるので、まあどっちもどっちかな。

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復活ギツネ

2014/5/30

数年前まで近所の牧場で毎年キツネが子育てをしていたが、
敷地の拡張工事が入ってから牧場内では子育てをしなくなっていた。

ただ、家の周囲含め姿はよく見かけていたので、
どこか近くに場所を移して子育てを続けているだろうとは感じていたのだが、
4月に入って隣接する資材置き場で子ギツネを見かけるようになり、
図らずもその予感は的中したことになる。

先月より何回か張り込んで撮影をしてきたが、
日中に親が姿を見せることはめったにない。
が、子供は臆せず無邪気に遊びまわって微笑ましい。
ただ、当初は4頭だった子ギツネが2頭になってしまったのは残念である。

周囲は広大な農耕地と防風林の混じる雑木林が点在する環境なので、
彼らの主食たるノネズミの類は豊富だとは思うが、
やはり野生の世界での子育てには厳しさがつきまとうのだろう。

20140530

写真は今朝の一枚だが、犬連れではこのくらいの距離がせいぜいである。
友達と勘違いして必死に向かっていこうとする駄犬のリードを押さえつけ(苦笑)、
シャッター切るのもなかなか大変なのである。

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