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実用的なF1.0

2020/9/5

富士フイルムから昨年だったか一昨年だったか開発発表のあった、XF50mmF1.0 R WRが正式に発表された。

長らく出る出る詐欺状態でw、しかも途中で33mmから50mmに変更されるという事態になったようだが、それでもミラーレス用AFレンズとしては世界初ということになるようだ。

ニコンのZにさらに大口径のNIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noctというのがあるが、こちらはなぜかMF専用レンズで、お値段も受注生産による126万円なり。始めから沢山売ることを想定していない、技術的誇示を目的とした同社が好きなメモリアルレンズなので、Zマウントが大口径であることの意義を知らしめるためにラインナップしているだけと思われる。

その点でXF50mm F1.0は20万前後と価格は抑えられており、-7EVの低照度でもAFでピントを合わせられる事を売りにしており、さらに防塵防滴のWR仕様なので、フジとしては普通に売ることを目的としているのは明らかだ。

ボチボチ出回っている海外の実写サンプルを見る限り、開放のボケは前評判よりは滑らかで美しく、それでいて口径食も意外に少ない印象。相変わらず寄れないのはフジのお約束だけどw

当初は33mm(35mmフルサイズ換算で約50mm相当)を目指していたようだが、周辺部まで十分に解像するよう真面目に作ると巨大になるとかで、50mm(同換算で約75mm相当)の変わったとのこと。F1.0のボケを活かすことを考えるとポートレートなど人物撮影に適していると思うので、結果的に50mmで良かったのではないだろうか。

実用面で考えると、メカニカルシャッターでは1/8000秒あたりが限界なので、F1.0を日中に使うにはそれより上の電子シャッターが必要だ。だが、このシャッター機構の切り替えを自動で行ってくれるメーカーは今のところフジとパナだけという状況。この辺りメーカーごとに事情はあれど、フジの場合は最初からF1.0のレンズを出すことが想定されていたかのような仕様だな。

ちなみに、35mmフルサイズであれば75mm F1.4相当だという言い方もでき、キヤノンのRFなら85mmにF1.2がラインナップされているので、そっちのほうが明るい云々という話もあるが、あの巨大さと重さ、それに40万近い価格を許容できればと言う話につきよう。

レンズの明るさだけ見れば時代を遡ればF0.7とかあったし、F0.95なら今でもそれなりに存在しているが、いざ実用的に使うとなればなかなかハードルが高いのは事実だ。

F1.0のAFレンズとは、AFの高性能化と顔・瞳認識、それに電子シャッターの自動切り替えなどまさに技術的な進歩に支えられていると言っても過言ではない。

FUJIFILM X-T4 / XF90mmF2 R LM WR / Classic Nega.

一眼レフ用も含めれば、30年前のAFレンズ黎明期にすでにキヤノンがEF50mm F1.0L USMというのを実現しており、大口径マウントと超音波モーターの組み合わせで実現したスペックだったと記憶している。

先のニコンZのNoctではないが、当時キヤノンがEOSで最後発でAFカメラ市場に参入してきた際、EF1200mm F5.6と並ぶメモリアルレンズっぽい位置づけだったと思われる。

四半世紀近く前の話になるが、実はそのEF50mm F1.0を持っていたことがある。当時のEOSはたとえ1であってもピントの山がつかみやすいとはお世辞にも言えなかったので、開放F1.0ではAFでなければピントはまず合わなかった。

それに当時はシャッター速度も1/8000秒が上限だったので、日中にF1.0を使うことはほぼ不可能。しかも開放だとかなりの口径食が出て..当時はそれを味と評する器量はあったw..仕事ではほとんでは使いみちのないレンズだった。

それに巨大なレンズの塊を動かすからかUSMの故障も多く、実際2回ばかりメーカー送りにしたと記憶している。

パナは35mmフルサイズのS5をあの大きさに収めたということは、マイクロフォーサーズ機であるGH5の後継機(GH6?)はもう少しサイズを小さくしてくるかな。

でも放熱を考えると闇雲に小さくもできないか。パナはモノづくりが真面目なので、どこぞのメーカーのように中途半端な仕様で「8K撮れます!」とは言わんだろうしw

商業的に失敗したと思われるG9 PROの後継機は何となく出ないような気がしていて、プロスペック的な写真機としてはS1・S5が答えのように思える..GXとG二桁機の系譜のみになるのではないかと想像..ので、マイクロフォーサーズでは仮称GH6に期待している。

可能であれば8K期待もあるが、こればかりはセンサーの都合もあるので、現時点では5.9KでRAW出力とかでも必要十分だろう。

それか4K120Pとか制限なくバンバン撮れて、尚且4K240Pも短時間ならOKとかなったら飛び道具しては面白いね。

FUJIFILM X-T4 / XF16-80mmF4 R OIS WR / ETERNA BLEACH BYPASS

まあ今は言うほど動画を撮ることもないのだが、4K以上でRAWが撮れるようになると話は変わってくる。

シャッターを押してから後の連写性能自体にあまり意味がなくなって、動体はRAW動画で撮るがスタンダードになるだろうというのが個人的な見立てだ。

必要なコマを後から取り出せば良い話なので、パナで言うところの6K/4Kフォトに近い感じだが、バッファに溜める方式は制限が出てくるのと、やはり1枚のRAWとして取り出せる点でRAW動画のほうが画質的にも有利で、利便性も高い。

RAW動画にさらにプリREC..プリ連写の動画版だ..が組み合わされれば、生きものやスポーツ分野での動体撮影は便利この上ないぞ。

上ではGH6に期待とは書いたが、もちろんフジのX-H2でも果敢にそういう飛び道具的なスペックでも積んでこないと、35mmフルサイズ競争に埋没していってしまうだろうね。

噂のあったパナ35mmフルサイズSシリーズの新型が発表された。S1に次いで型番は5。

C社以外、足並み揃えたように5の付くモデルは軒並み廉価または下位モデルなのは、ことさら5をプレミアム扱いにしたいC社へのあてつけかw

S5はまだざっとしか仕様を眺めていないが、それでも最近のパナらしく実に手堅い製品と感じる。数値だけならS1を食っちゃっているしね。

画素数は2400万もあれば今どき必要十分で、もし何ならハイレゾで9600万画素も出力できる。連写性能はメカシャッターで秒7コマ程度だが、マイクロフォーサーズ機でお馴染みの6K/4Kフォトが搭載されており、前者は1800万画素を30コマ、後者なら800万画素を60コマで出力でき、プリ連写も可能だ。

動画も手堅く、パナにとってはもはや当たり前の4K60P(4:2:0 10bit)は当然ながら、4K30Pなら4:2:2 10bitを内部に記録できるようだ。S1では別売りだったV-Logは最初から搭載されているっぽい。ハイスピード関連はまだ未調査。

そして何と言っても驚きはそのボディサイズ。上位機のS1系が殊のほか巨大なので、その反動もあるが、同社マイクロフォーサーズ機のGH5・G9 PROより少し小さいというのはどうなのさw

しかもこの性能で20万円代前半なら文句をつけるところがないぞ。パナのお約束ですぐに店頭価格は下がると思うしw S1Hと比較してもあそこまでの動画ニーズでなければ、S5のコストパフォーマンスはなかなか良いかな。

それにしても既視感のあるデザインだと思ったら、グリップや軍艦部のダイヤル類がフジのX-H1にソックリだw

FUJIFILM X-H1 / XF100-400mm F4.5-5.6 R LM OIS / Velvia

連続している台風が太平洋の湿気っぽい空気を運んできたのだろう、昨日辺りからムシムシしてかなわん。一昨日までは終日窓を締め切っていたというのに。

その台風も次に来る10号はヤバそうな感じなので、昨年みたいな大きな被害がなければ良いけど..

デジタル音源に対するレコード復権にも見られる通り、過度なデジタル化が進行するとアナログへと揺り戻しが起きるのは写真の世界も同様で、若い人を中心に懐古主義的にフィルムを好んで使う人が増えている。

カメラは同じレンズマウントを使う限り、ボディ側を交換する発想に立てば、フィルムカメラとデジタルカメラと言った具合に使い分けができる。主流となったミラーレスカメラはフランジバックの関係で物理的に使用できないが、一眼レフであれば可能な話だ。

35mm版であればキヤノンとニコン、それにペンタックスが該当するが、とりわけ懐古主義的に遊べるという意味ではニコンとペンタックスが双璧であろう。特にニコンは歴史的に見ても名機と呼ばれるカメラが多い。

その点、フィルムバック交換式のブローニーカメラ(中判カメラ)は、デジタルカメラ全盛の今の時代となっては実に理にかなっている仕掛けと言えるだろうね。

ペンタの645はどちらかと言えば35mm版に近いが、ハッセルブラッドはまさにそのフィルムバック交換式の代表選手で、特に人気の高かった500Cシリーズ辺りは未だにユーザーは多いと思うので、デジタルバック交換式として使えれば、手持ち資産の有効利用としては都合が良いだろう。

ハッセルブラッドが今度発売する907Xの50Cデジタルバックはその往年のVシリーズにも装着でき、5000万画素の中判センサーの部材調達コストが下がったのか、価格も従来の中版デジタルバックに比べてかなり抑えられているので、結構売れるのではないかと想像している。

35mmフルサイズが高画質と騒がれる..メーカーの思惑優先だが..が、高画素化が進んで逆にダイナミックレンジは低下しているので、より大きな中判センサーにはその点では敵わない。上には上がいるという良い例である。

35mmフルサイズで6000万画素とか8000万画素とか騒ぐなら、5000万画素の中判センサーのほうがレタッチ耐性含めて高画質なのは言うまでもないだろう。画素数の多さが画質の良さではないのだ。

RICOH Caplio R6

その昔使っていたおハッセル様こと、Hasselblad 500CWとCFE80mm F2.8 T*の組み合わせ。

ウエストレベルで覗くスクエアな世界に憧れて満を持して手に入れたが、いざ使ってみると風景のような自然写真分野では使いこなしが難しく、なかなか難儀した記憶が。

やはり人を撮ったりスナップに使うのには適当だったと思われるが、その点、6×6スクエアで北海道美瑛の雄大な風景を切り取っていた前田真三氏(故人)には感服する以外にない。

それにしてもだ。もしまだ手元に503CWが残っていたら、間違いなく件の50Cデジタルバックを手に入れていたろうな。

もう15年近く経つが、新規事業としてハイビジョンカメラで映像制作の仕事を始める際、その原資とすべく売り払ってしまったことは今更ながら先見の明が無かったなと悔やむw

EOS R5の熱問題は熱だけに未だにくすぶっているようである。

海外サイトの検証で、常温での動画撮影時にボディ内の温度が上がって停止するのは実際その通りだが、なんと冷蔵庫内でインターバル撮影を行っても、一定の時間に達すると問答無用で停止してしまうという話である。

当然ながらこの時はボディの温度が高いということもないので、どうやら熱暴走自体とは関係なく、ソフトウエア的にタイマー制御で勝手に撮影を止める、またはできなくしているようだ。

良い意味に捉えれば、熱暴走でハードに負荷がかかって最悪破損するのを防いでいるとも取れるが、穿った見方をすれば上位機..この場合は専用機であるCINEMA EOSだ..に気を使って、必要以上に制限を課しているとも受け取れるな。

自社のラインナップに専用機があるのでそこに忖度するのはわからないでもないが、であればやはり何故に8Kで撮れることを必要以上にアピールしてしまったのか、という素朴な疑問に行き着く。

動画はやらない、写真しか撮らないという人は見て見ぬ振りしているかもしれんが、50万もする高級カメラがまともな製品仕様になっていないのはにわかに信じられんな。

主に海外で騒がれているのは、あちらには写真と動画の垣根なく映像クリエイター的に活動しているコマーシャル系のカメラマンが多く、明らかに国内とは事情が異なることも大きいだろうね。何しろR5はCINEMA EOSと併用するのに適しているとかなんとか喧伝していたので、そこに期待していた人はふつうは怒るよな。

動体に対するAF性能がずば抜けて素晴らしいという評価だけに、動画周りでケチが付いたのは残念だが、現在はどこも入荷未定状態らしいので、何となくセカンドロット..ファーストロットを買った人は人柱だなw..は何らかの対策を施している最中ではないか?と勘ぐっている。

FUJIFILM X-T3 / XF16mm F1.4 R WR / CLASSIC CHROME

月末近くになると細かい仕事が飛び込んでくるので気が抜けない。Web系、デスクトップ系、サーバー系が入り乱れてくると、上手く頭を切り替えないと危険だ。

いざ蓋を開けてみると、これって何で今まで放っておいたのさって思うような案件が多くも、まあこれも新コロナ禍の影響なんだろうなと納得せざるを得ないのは、しがない末端フリーランサーの立場故かw

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Hが好き

2020/8/22

目下X-T4を買い増そうか検討中である。

X-T3はちょっと前に引き合いがあって手放しているので、現行ではX-H1がサブとして残っている状態。X-H1自体を単体で見るとさほど問題はないのだが、X-T4との併用時にはさすがに二世代も差があると不満のほうが目立ってくるものだ。特にクラシックネガが使えないのは痛い。

当初は仔細な点で異なるX-T3との併用のほうがアレかなと思っていたが、先のフィルムシミュレーションの例のように実際はX-T4と比べてX-H1で「できない点」のほうが目立ってしまうという事態に。

X-T4の動画マシン化でX-H系統は無くなるという噂があったものの、現状X-H2の登場は既定路線の様子。それでも早くても2021年以降との話なので、X-T4の2台体制で当分OKという判断ができそうだ。

当初はパナみたいにX-T系は写真、X-H系は動画みたいに住み分けるのかと思いきや、X-T系もヒエラルキーを無視して思いっきり動画にも振ってきているので、その辺り差別化が難しそうだと思っているが、現状のボディサイズやグリップ周りを勘案すると、ユーザーインターフェースをGFX100と同じにしてくる..つまりダイヤルインターフェイスの廃止..のではないかと想像する。

センサーは3300万画素を超えたもの..ソニー製4000万画素の裏面照射型?..を積んで、動画は8K30Pと4K120Pを実現するとも予想。もちろん手ブレ補正もX-T4と同じ軽量タイプに更新されるであろうし、当然バッテリーも新型(NP-W235)に変えてくるだろう。それに8KをやるならメディアはCFexpressに置き換える必要もあるしね。

X-T4があるのでボディはもう少し大きくなっても問題ないので、EOS R5のように熱問題が起きないよう、パナのS1H型のヒートシンクを積む可能性も否定はできないなと、一応は言ってみるw

OM-D E-M1 MarkIII / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO / ブリーチバイパス

ついでに要望として、仮に8Kを実現できるなら、再生中に任意のコマを簡単にJPEGに切り出せる機能..当然フィルムシミュレーションにも対応..は是非欲しい。そうなればプリ連写と合わせて、高速連写機として他社との差別化が可能になる。

あと贅沢を言えば、オリパナ同様のハイレゾショットも欲しいところ。3000万画素以上あればGFX100並の1億画素の高画素も夢ではない?

その昔、出版業界に勢いがあった時代、アルバイトしながら食うや食わずで作品を撮りため、編集者に見初められて一気にデビューみたいな夢物語があったのは事実だ。

生きもの系の分野で言えば、当時登竜門とまで言われていた平凡社のアニマなどまさにその一つの例だが、そういった写真を必要としていた肝心のグラビア系のプラットホームが凋落し、時代は一気にインターネットの無料メディアへと変わった。

誰でも作品を世の中に発表できるようになった反面、デジタルカメラの進歩とともに写真撮影の敷居が下がり、同時にライバルも増え、右を見ても左を見ても誰が撮っても同じような、どこかで観たような作風の作品ばかりが量産されているのである。

1億総カメラマン時代の到来で底辺プロの需要が低くなり、それに代わって誰かを模したようなオリジナリティが薄れた作品で業界は溢れているわけだ。

生きもの系の写真の場合はさらに深刻で、シャッターチャンスの数から言えば、在野の研究者や数多のアマチュアカメラマンに分があるのは自明の理であり、各自が自由に自身のコンテンツとしてネットを介して世に発表できる時点で、プロの存在意義がより希薄になってしまった。

デジタルカメラの進歩で写真を趣味にするには良い時代になったが、写真で飯を食うには難儀する時代への変移であり、これはもはや押し留めようもない潮流なのである。

FUJIFILM X-H1 / XF16-55mm F2.8 R LM WR / PROVIA / Dレンジ優先

涼しいうちにと思って日の出前に山へ入り、少し回り道して支線を辿って里まで降りてきた。

稜線から日が差し込み始めたばかりだが、里山界隈は昨夜の熱気が残っているので、日陰にいてもすでにムッとする感じ。

休耕田脇のあぜ道にタチアオイが咲いていたが、てっきり初夏の花かと思ったけど、この長梅雨で調子でも狂ったかな。

デジタデジタルカメラ市場はスマホに押されて縮小傾向にあるのは昨日今日始まった話ではないが、この状況を想像できてなかったメーカーはどこも苦しいお家事情のようだ。

キヤノンはすでに報道で四半期決算が約180億円の赤字と言われている。市場で人気のキヤノン株ですら、年頭からみれば50%近くも株価が下落していて、この半期だけでも時価総額で2兆円近く消えて無くなった計算になる。

直近で見れば新コロナ渦の影響が多大..在宅ワークの広がりでオフィス機器の需要が下落中..であるという言い訳はもっともらしくわかりやすいが、それ以前から事業の構造的問題に起因しているのは明らかであろう。

メーカー各社の市場シェアは新製品の発表タイミングやキャンペーンの動向に左右されるので、一概にこれといった数字を出すのは難しいが、ここ2年ほどのデータだと次のようになっている。

販売台数別シェア
デジタルカメラ全体 ミラーレスカメラ
1 キヤノン 37.3% 1 ソニー 42.5%
2 ニコン 26.7% 2 キヤノン 19.8%
3 ソニー 13.1% 3 富士フイルム 17.5%
4 オリンパス 6% 4 オリンパス 8.4%
5 富士フイルム 5.8% 5 パナソニック 7%
6 その他 11.2% 6 ニコン 4.6%
BCNランキング(2018年4月〜2019年3月) テクノ・システム・リサーチ(2018年度)

一眼レフとコンパクトカメラまで含めると従来からあるシェアの印象通りといったイメージだが、ミラーレスカメラに限定すると動きが出てくる。

2018年はキヤノンとニコンが本格的に35mmフルサイズのミラーレスカメラを市場に送り込んできた年なので、直近のシェア感覚と異なるイメージだが、それでもソニーのシェアは圧倒的だ。

ほとんどのカメラメーカーはデジタルカメラとレンズだけ作っているわけではないので、一般的に我々ユーザーがイメージするメーカーの市場シェアが企業の価値を決めているわけではないことは知っておいたほうが良い。

メーカー各社のデジタルカメラ関連事業のセグメント別割合を調べてみたが、各社とも純粋な数字や割合を公表しておらず、映像事業全体みたいな括りで表現しているので、なかなか正確な数字にならないが、近年は概ね次のような割合になっている。

デジタルカメラ事業の割合
ニコン 約38%  
ソニー 約24% イメージセンサー事業を含む
キヤノン 約23%  
パナソニック 約14% デジタルカメラだけの数値は不明
富士フイルム 約14%  
リコー&ペンタックス 約10% デジタルカメラだけの数値は不明
オリンパス 約6%  
注:数字は各社公表のセグメント別売上から類推

ソニーは堅調なイメージセンサーを含んだ数字で、純粋なデジタルカメラ事業の割合は不明。

パナとリコーも同じく純粋な割合は不明だが、両者とも本業は別にあるので、実際のデジタルカメラ事業の占める割はもっと少ないと思われる。特にパナの事業が多種多様なのはよく知られた通り。

これに各メーカーの直近(2020年3月通期の連結)の売上高を合わせて見てみると。

売上高
ソニー 約8兆3000億円  
パナソニック 約7兆5000億円  
キヤノン 約3兆6000億円 2019年12月通期 連結
富士フイルム 約2兆3200億円  
リコー 約2兆円  
オリンパス 約8000億円  
ニコン 約6000億円  

企業規模でソニーとパナが別格なのは言わずもがなだが、特にソニーはメーカーというより金融会社と言ったほうがもはや適切なほど、その筋の人から見たらデジタルカメラのイメージは希薄だろう。

そして企業全体の同期の利益率となるとさらに興味深い数値が..

利益率
オリンパス 10.5% 自己資本比率 36.5%
ソニー 10.2% 自己資本比率 20.8%
富士フイルム 8.1% 自己資本比率 60%
キヤノン 4.9% 自己資本比率 60.6%
パナソニック 3.9% 自己資本比率 32%
リコー 3.9% 自己資本比率 32%
ニコン 1.1% 自己資本比率 54%

売上高はその企業の規模を現すわかりやすい数字となるが、実際の企業体力は財務力といかに利益を生み出せる体質であるかにかかっており、利益率が高いというのは重要な要素の一つだ。

最も利益率の高いオリンパスが最も早くデジタルカメラ事業を手放しているのは面白い。自己資本比率が低いことからも分かる通り、それだけ株主の声が強く、デジタルカメラ以外の事業が優良且つ堅調で将来性が高いということを現していると言っていいだろう。

こうして数字で見てみると、オリンパスが赤字続きのデジタルカメラ事業を手放したのは株式会社として至極当たり前の判断であって、決して企業全体の業績不振が理由ではないことがわかる。

そしてもうお気付きだろうが、オリンパスとは逆にデジタルカメラ事業の割合が圧倒的に高いのに、利益率がかなり低いのが、かつての業界の雄であったニコンだ。

FUJIFILM X-T4 / XF16-80mmF4 R OIS WR / Classic Nega.

実際、ニコンの今年度の通期は500億円近い赤字の見通しとなることが分かっている。この上四半期だけですでに前年同期比約60%の減なので、新コロナの影響をモロに被ってしまっている。

オリンパスの身売り話を対岸の火事と思っている他のメーカーブランドのユーザーは多いが、実は今一番危うい状況に置かれているのがニコンで、第二のオリンパスの可能性が囁かれているのも同社という話だ。

実際のところ、オリンパスのデジタルカメラ事業割合は切り離しても本業にそれほど影響はなく、むしろ有望な事業に集中できるのだが、事業割合が圧倒的に高いニコンにはその同じ手が使えないのが、投資家から見たら不安材料でしかないということになる。

企業経営は選択と集中の見極めが大事と言われるが、そういう意味でオリンパスとニコンは明暗を分けた感があるな。

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オリンパスから事前のアナウンス通りED100-400mm F5.0-6.3 IS(35mmフルサイズ換算で200-800mm相当)と、ローエンドのカメラボディが発売される。

身売りが決まってから矢継ぎ早、と言いたいところだが、身売り話以前から決まっていたプロダクツだからまあ予定通りといったところか。

ローエンド機はおいといて、100-400に関しては似たようなレンジでED150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROという大物が年末に控えており、安いほうを先に出すのはマーケ的にセオリー無視..例えば安い方のEOS R6はR5より後に発売など..な気もするが、150-400はお値段が相当に張ると想像できるので、市場でカニバリズムはないと考えているのだろう。

マイクロフォーサーズではパナライカにほぼ同じスペックのレンズがあるが、こちらはテレコン対応である点がかなり魅力的である。パナライカの100-400は同社製のテレコンに非対応なのが残念なのでね。

価格的に意外に低価格に押さえられているし、PROレンズにカテゴライズされていないので性能的にどんなものか気になるが、望遠端400mmとED300PRO+TC-14の約420mmがMTF上では拮抗しており、なかなか良いのではないかという印象。

ただ、オリンパスご自慢のシンクロ5軸手ブレ補正に対応していない..それ故にPROレンズではないらしい..ので、スペック上は3段分の補正に留まっているのがやや残念。ややというのは、サンプル動画の補正を見る限りその数字以上にピタリと止まっているので、実質的な性能は気にするほどのこともないのかも。

パナライカを使っているので正直微妙だが、テレコンが使用できるのとE-M1系のカメラ内深度合成に対応するのは魅力的ではある。ただ100g少々の重量増と全長が3cm長いのを許容できればの話だけど。

ちなみに興味深いのがレンズ構成。ちょっと前に先行発売されたシグマの100-400ライトバズーカと、特殊低分散レンズの配置含め瓜二つなのである。センサーサイズとの関係からか後玉が若干小さいが、恐らく光学系はシグマのOEMかなと。それなら5軸手ブレ補正に対応していないのは何となく納得。

望遠ズームと言えば70-200mm F2.8クラスが人気だが、そのシグマの影響もあって最近は100-400mmクラスが主戦場っぽいね。先ごろキヤノンが発表したRFにも100-500mmが用意されているように、写真撮影の主役の座を奪いつつあるスマホとの差別化という意味で、超望遠レンジはこれからますますホットになるかもね。

FUJIFILM X-H1 / XF100-400mm F4.5-5.6 R LM OIS / CLASSIC CHROME

朝からうるさいセミたちに負けじと、仕事場の窓辺でウグイスがホーホケキョ。

こんな時期に鳴くのも珍しいと思いつつ、XFの超望遠ズームで網戸越しに撮影。さらにもう1歩踏み込んだところで気が付かれて逃げられた。

先日の話に関連するが、写真で生計を立てていくにはどうしたら良いか?という質問も時々受ける。

今の時代ならSNSに作品をアップしてイイネを沢山もらったり、フォロワーを増やせば仕事の依頼が沢山くる!と思い込んでいる脳天気な若い人が多い。自分のタイムラインに盛りに盛った彩度高目の写真を並べて、イイネしてください!とやってるあれだ。

しかしそこには、あなたの撮ったその写真、どこの誰が必要としていて、そして誰が対価としてお金を払ってくれるのか、という視点が抜け落ちているのである。

自分の好きなものだけ好きなように撮って飯が食えるなどというのは、ほんの一部の才能のある人..写真が上手いとかフォロワー数の多さではなく、営業的なセンスとでも言えば良いかな..を除けば、夢物語でしかないということは理解しなければならない。

欧米には美術品と同様に写真を買って部屋に飾る文化があるが、残念ながら日本にはそんな文化は定着していない。写真はタダ、イイネはくれても使いみちのない写真に金を払う人などいないのである。

ではどうやって収入を得たら良いか?それは他の多くの業種と同じで、お客様から頂く以外に方法はない。つまり、依頼されて写真を撮るという、職業カメラマン的には至極当たり前の原点に立つしかないということだ。

そして商業的に依頼されて撮る以上、撮影対象に好みを言える立場ではない。地元で地道に営業活動を繰り返し、同時に何でも撮るという気概と技術が必要なので、最低でも営業トークとスタジオでのライティングワークは必須だ。お客様から対価を得るということはそういうことである。

自慢の35mmフルサイズデジタルカメラを舶来の三脚に載せ、週末のたびにワイワイ皆と一緒になってインスタ映えする景色を撮っても、イイねはもらえても金はもらえないぞ。

繰り返しになるが、写真で飯を食っていきたかったら、必要としている人から依頼されて撮るか、世の中にニーズがある写真..これは実は前者と意味は同じだけどね..を撮りためる、この2択しか選択の余地はない。

OM-D E-M1X / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO + MC-20

6月の満月をストロベリームーンと呼ぶように、英語圏では8月の満月にも「スタージャンムーン」という別名があるそうだ。イチゴは日本でも普通に馴染みがあるので何となく知っていたが、チョウザメ(英名でSturgeon)の漁期に合わせた名前になっているとは知らなんだ。

昨晩の撮影時間帯はあいにく薄っすらと雲が掛かっていたので条件が良くなかったが、とりあえず1200mm相当の手持ちハイレゾショット(約5000万画素)で記録しておいた。

それと余談になるが、この夏噂になっていたネオワイズ彗星。早くから撮影する気満々だったのだが、当地では長梅雨の影響で夜空が満足に開けることがなく、梅雨明けてすぐに西北西の低い高度に辛うじて双眼鏡で確認しただけであった。

残念ながらすでに6〜7等級程度の暗さで肉眼での目視は厳しく、当日も結局雲が多くて撮影自体不可であった。