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屁に糞とは

2018/9/3

ヒルガオに混ざって、林縁でヘクソカズラが花を付けている。ヘクソカズラは夏から秋にかけて花を付けるが、赤城高原では晩夏のイメージが強い、いわゆる雑草(多年草)だ。

それにしても屁糞葛とは人前で名乗るに何とも恥ずかしい名前を付けられたものである。漢字で表記する通りその独特な匂いが名前の由来だが、臭気は昆虫たちへの忌避としてであり、葉っぱを揉んだり気づけたりしない限りは臭気を放つことはない。

臭気の原因はメルカプタンというスカンクの放つ刺激物と同じ成分らしいので、そう言われると相当に臭いイメージがあるが、野に生えているだけではそんなことはまったくない。

そしてその名前からくる印象とは別に、乾燥した実は生薬や化粧品の材料としても使われるので、意外に昔から人との関わりは深いようである。

FUJIFILM X-H1 / XF16-55mm F2.8 R LM WR / PROVIA

このヘクソカズラ以外にも、生きものや植物の名前には本人が聞いたらとても許容できそうにないものがある。

例えばアホウドリ、ナマケモノなどはその代表例だろう。前者は決してアホな鳥ではないし、後者も動きが遅いだけで怠けているわけでもない。

ちょっと前に海野先生の昆虫写真を眺めていて気が付いたのに、クズノチビタマムシ(屑でチビのタマムシか?)とか、ゴミムシダマシ(ゴミ虫を騙す?)なんてのもいたっけ。

その他、昆虫などに見られる他の種に擬態する生きものにニセxxと付くケースがあるが、進化の過程で本家に似せることで利益を得ているので、それはまあ分からなくもないかな。

古の時代から人に馴染みのあった生きものには、往々にして風情のある名前がつくものの、近代になってから分類上の都合で命名された生きものたちは、その見た目や行動などから機械的に名前が付けられてケースが多い。

前述のアホウドリなどは希少さも手伝って、名前の見直しの動きもある。アホウドリ研究の第一人者である長谷川先生は、大海原をグライダーのように優雅に飛ぶ姿を現して、長崎界隈で古くからの呼び名であるオキノタユウ(沖の太夫)を提唱している。