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水田のような湿性環境には水棲生物がたくさん生息している。水棲というくらいなので当然水が重要なのだが、昨日も書いたように田んぼに水がある時期は意外に限られている。

水のある時期には水を必要とする生きものが、水が少ない時期にはそれほど水を必要としない生きものが、水がない時期には水がなくても生きられる生きものが、それぞれ発生時期をずらして(または潜み)生活している。そしてそれはまさに生態系であり、生きもの多様性の一面を現しているのである。

そんな湿地の生態系で視覚的に目立つものといえばトンボが挙げられるが、トンボは生活ステージの段階で、水を必要とする時期とそうでない時期に明確に別れる生きものだ。

前者はヤゴと呼ばれる幼生形態であり、成虫であるトンボとなるまでの期間..これは種類によって異なるが幼生のまま年をまたぐ種が多い..は水中生活を行うのである。ところが羽化して以降トンボの姿に変異すると、産卵までは直接的に水を必要としなくなるため、夏から秋の水のない田んぼなどいわゆる水辺周辺で生活することになる。

田んぼは人為的な生産活動の場なれど、その農耕スケジュールとトンボのライフサイクルが偶然?にも一致するところとなり、農耕史以降今日に至っていると言えよう。

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シックなスティールブルーに身を包むシオカラトンボ(写真はオオシオカラトンボ)は、平地の湿性環境を代表するトンボだ。日当たりの良い場所を好み、昨日の記事の写真のような開けた環境にも多く見られる。

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谷戸の田んぼ脇の林縁部で陽射しを避けて休むノシメトンボの雌。平地よりはどちらかと言えば低山の山間地に多く見られる。

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山林に囲まれた谷戸地形に見られる典型的な田んぼの風景。時間帯に応じて適度に日陰が作られるのが判る。

トンボの仲間には暑さを避けて生活する種類がいる。避暑トンボなどと呼ばれるアキアカネ..いわゆる赤とんぼ..はその代表選手で、暑さが厳しくなる盛夏には高原や高山など高所で暑さを凌ぐ。前述のノシメトンボも同じアカネ属で暑さを嫌う傾向があるが、アキアカネのように集団で避暑に移動することはなく、谷戸のような山林が隣接する環境で生涯を送るようだ。

水の田

2016/6/26

また田んぼかと思われるかもしれないが、日頃からレタス畑や蒟蒻畑に囲まれて生活している身にとって、青々した稲が風になびく姿は新鮮なのである。

作物の生育に水が必要であることは、その量に関わらず変わりのないことだが、水田ほど水の豊かさを象徴する人工的な農地空間はないだろう。

もうこの時期は田植えの頃ほど水を必要とはしないが、水の田と書いて水田であることに変わりはなく、その人為的な湿地帯に命を宿す生きものもたくさんいるのだ。

そう、ご先祖様が稲作を始めて以来二千有余年、水田は日本の自然の一部となって、命のゆりかごの役目を果たしてきている。

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南まで下れば関東にもこれだけ広大な水田地帯がある。

稲作は水を上から下へ順に流す必用があるため、歴史的に谷戸の傾斜地が利用されてきた..山間の棚田などがまさにその名残だ..が、近代農業として灌漑など用水が発達してからは平野部にその舞台が移り、格段に生産性が上がってきた。

主には政治的な理由で自給率の低い日本ではあるが、米が主食であるかぎり、水田は人にとっても無くてはならないウェットランドなのである。

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白鷺いと珍し

2016/6/25

北関東のそれも北部ともなれば、アオサギは普通種..水不足で話題の矢木沢ダムの水際にさえいる..なれど、シラサギの仲間はほとんど見かけない。それが水田や河川、湿地帯の無い我が赤城高原では尚更の話である。

しかし、南関東の水田地帯まで下ってくると、さすがにシラサギの仲間はよく見掛ける。その昔、平野部に住んでいた頃は珍しくもなかったコサギやチュウサギだが、ここ10年久しくマジマジ見ていないため、目の前をフワフワ飛んでいる..サギの仲間は総じてそういう表現がピッタリな飛び方をする..と、ついつい目で追ってしまう。

昔はダイサギが田んぼに突っ立っているだけで、ツルがいるなどと騒がれた時代もあった。さすがに情報で溢れかえるこの時代、サギとツルを間違える人も見掛けなくなったが、鮮やかな初夏の緑に佇む姿はどこから見てもよく目立つ。

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アオサギは確実に個体数を増やしている種だが、コサギやアマサギなどは逆に減っていると言われている。悪食で何でも食べるのはどちらも似たような食性なのに、何故シラサギの仲間だけが減っているのかは謎である。何れ白いサギは珍しいなどと言われる日も案外近いかもしれない。

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関東にも米所

2016/6/24

南関東のライスフィールドに滞在中。米所と言えば新潟や東北を思い浮かべるが、関東にも旨い米を生産する地域がいくつかある。

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独特の谷戸に広がる水田地帯には、オオタカと並んで里山の猛禽を代表するサシバが多く見られ、今は育雛期のまっただ中である。

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