タグ : イヌワシ

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20140107

赤城高原のこの冬一番の冷え込みは今朝であった。日の出前に氷点下12℃まで下がって、犬の水バケツは完全氷結である。昨日のような風もなく、雲ひとつ無い放射冷却によって、上越国境の山々が見事なモルゲンロートに映えた。1月に入り厳冬のシーズンを迎えるが、それは凛とした美しい季節でもある。

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そして北部フィールドも雲ひとつ無く晴れ上がり、絶好のワシ日和に。風がなく上着も必要ないほど陽射しがあったが、風がないということは天狗様の行動にも影響が出そうなもので、午前中は例のごとくクマタカ相手に暇つぶし。が、昼頃より突然の天狗フィーバーに沸いて、久しぶりに昼飯のカップラーメンが倍返し状態であった。

雄がゆっくり先行し、やや遅れて雌が後追い。突然雄がジグザグに反転と降下を繰り返しつつ獲物を牽制、緩斜面の疎林に突っ込むと見せて急上昇すると、すかさず雌がフォローに入って同様の動きを繰り返す。ペアで連携してハンティング行動を行うのは、猛禽類の中でも天狗様独特のものだ。ペアのどちらかが入れ替わってすぐにはなかなか難しい動きだが、シーズンを幾つか過ごせば息もぴったりである。

厳冬期と聞けば生きものにとって厳しい世界を想像するが、捕食者として食物連鎖の頂点に立つ天狗様が狩りを行うということは、その姿は見えずとも、狙われ食われる側の餌動物たちも必死に生きている証となる。厳冬に息づく生きものたちの気配を感じたいものだ。

天高く

2013/9/30

20130930

額の汗を拭い、最後の急登を前に一休み。明日から天候は思わしくないらしいが、どうしてどうして本日は空が高い。しかも月末携帯不通だ(笑)。

目を凝らせば県境付近の二千m前後はすでに紅葉が始まっている。

ふと気が付けば、早々と天狗様の姿を確認。ただ、機材はバックパックの中だし、準備には一手間掛かる。ここは双眼鏡でのんびり行方を追う。

20分ほどで残りの急登を登り切り、撮影機材をセットして、待つこと更に1時間。今日は天気同様にワシ運もよく、頻繁に狩場とする伐採地に親子3羽で姿を見せた。

そう、1日いてたった5秒の目視で終わることもあれば、こんなフィーバーなこともある。

日本で最も広い行動圏を持つ生きものを相手にするということは、この現実を避けては通れない。

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時を超えて

2013/5/26

所属する研究会の大御所よりお声かけいただき、

隣県のワシのおヒナ様の様子を見に行ってきた。

それまでおとなしく伏せていた70日齢少々の三ツ星が、

風が吹くと思い出したように白斑を5月の陽光に輝かせる。

実はこの場所、その昔何度か訪れたことがあり、実に28年ぶりの再訪なのだ。

もちろん、ペアはとうに入れ替わっているとは思うが、

地図片手に初めて訪れた時も、確かこんな日射し眩しい季節だったと記憶している。

20130526

少しずつ全国の生息地から姿を消しつつある昨今、

四半世紀過ぎても、いやそれ以前はるか昔から、

連綿と子育てを続けているペアがいることの嬉しさよ。

山の神に感謝、天狗様に乾杯。

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謹賀新年

2013/1/1

20130101

蛇を狩る天翔る狗鷲の如く、

俊敏にそして果敢に攻めていきましょう。

今年もよろしくお願いします。

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お株を奪う

2012/12/3

久しぶりに面白いシーンを見た。イヌワシがクマタカのお株を奪うような行動を見せたのだ。

ひとしきり巣材を運んだ後、休憩していたのかと思いきや、突然下流側の林内にいたクマタカに対し排斥行動に出た。

最初は林縁部で攻撃を仕掛けたのだが、クマタカはすぐにブナ林に逃げ込むいつもの行動。それが面白くなかったのか、イヌワシ(雄)はしばらく間合いを計るように停空飛翔状態でブナ林の上空で静止、タイミングを見て一気に林内に降下、ブナの枝伝いにクマタカを追い回し始めたのだ。

これには見ていた私も驚いたが、一番驚いたのは狙われたクマタカのほうだろう。よほど泡を食ったのか、イヌワシの攻撃を避けようとバランスを崩してクルクルと林床近くまで落ちて、一度は視界から姿を消した。

すぐにバタバタと上がってきたが、低い枝に止まり直したところを再びイヌワシに突っかけられると、一旦は諦めて反撃しようとしたのかお互い向き合うように翼を広げて対峙。しかし、クマタカが堪えきれずに林内を遁走し始めると、イヌワシも同じようにヒラリヒラリと木々をかわしつつ後を追いかけ、そのまま両種とも視界から姿を消したのだった。

30分ほど消失地点付近を凝視していたが、谷の上流側上空を旋回するイヌワシ(雄)を発見する。もしかして、と思い拡大望遠でそのうを確認するが、さきほどのクマタカが食われた痕跡は認められなかった..

大型猛禽類の中では比較的翼が幅広で短いクマタカは、林内をすり抜けるように移動するのが得意である。それに対しイヌワシはグライダーのごとく翼が長いため、開けた空間での行動を得意とする。と、杓子定規に語ればまあそんな感じなのだが、実際はイヌワシもヘビなど小動物を狩ることがあるため、一般に考えられている以上に林内を利用するようである。

ただやはり、狭小空間は本来好む主戦場ではないため、形勢は危うかった可能性もあったが、今回のケースでは明らかにクマタカが不利のように見えてしまったのもまた事実。襲うものと襲われるもの、その立場の違いも大きく影響していたのかもしれない。

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20121114

言うまでもなく鳥は空を飛ぶ生きものである。

鳥はその大小にかかわらず、身体的な特徴として両腕を2枚の大きな翼として利用できるように進化してきた。そしてその2枚の翼を用いて、地球上の大空を自身の力のみで自由に移動できる点で、地べたを四肢で移動する以外に手段のない他の生きものとは大きな違いがある。鳥好きのその多くは、空を飛ぶことができるという能力にその魅力を見いだす人は多いはずだ。

飛ぶことがある意味当たり前な鳥にあって、空を飛ぶことで主たる生活の糧をえる種類には、高速で飛ぶもの、長距離を移動するもの、水中に潜るものなど、その能力がひときわ長けた仲間が当然のごとくいる。とりわけ、他の生きものを直接襲って餌とする猛禽類の飛翔能力の高さは、鳥の仲間の中でも特筆すべきものがある。

学名の Aquila verreauxii からも判るとおり、ブラックイーグル(現地での呼び名)はAquila属、つまり旧北区を中心に日本にも生息するイヌワシの仲間である。英名はVerreaux’s Eagle(日本名コシジロイヌワシ)で、生息地はアフリカ大陸。大きさやフォルム、それに生態はまさにイヌワシのそれとうり二つであり、全身黒色の羽衣に覆われ、背中から腰に掛けて和名の由来でもあるワンポイントの白が美しい。

写真集「GoldenEagle イヌワシ(平凡社)」の著者である、滋賀県在住の写真家須藤一成氏の撮り下ろしになる本作品では、そのブラックイーグルの巧みな飛行術を、余すところなく見事なカメラワークで捉えている。

猛禽類は小型になるほどその敏捷性は増す傾向にあるが、翼開長がゆうに2mを越す大型のワシが、空の高みから地表すれすれまで、重力を無視したかのようにアクロバティックでダイナミックな動きを見せるのは圧巻である。常にペアで行動すると形容されるほど楽しげに舞うディスプレイフライトや、餌の大半を占めるダッシー(ハイラックスの現地名)との攻防、そしてハンティングシーンなど。特筆は大型のワシではまず見られない宙返り飛行である。

撮影地であるジンバブエのマトボヒルズは、世界遺産にも登録されている貴重な場所だ。本作品では、その奇峰奇岩の太古の風景をバックに、悠然としてそれでいて力強い飛翔能力を魅せるブラックイーグルの姿を堪能できるはずだ。

The most beautiful flyer in the world.

世界で最も美しき飛行家。サブタイトルにある上記フレーズは、本作品で編集とDVDオーサリング、それにパッケージデザインを担当させてもらった私が贈った言葉だ。飛ぶことがすなわち生きることを体現する飛行術の先輩である鳥に対し、敬意を現す意味で、人類初の飛行に成功したライト兄弟の機体からお借りした言葉でもある。

空を飛ぶ生きもののその完成された美しい姿を、ワシ好きや鳥好きにとどまらず広くご覧頂ければ幸いだ。

晩秋の北の森

2012/10/27

この時期はフィールド巡回の季節。普段は単独行動を基本としているので、終日特定の場所に陣取る定点調査ではなく、午前午後で複数箇所をグルグル回る方式をとっている。

天狗様はこれから繁殖シーズンを迎えるわけだが、テリトリー維持のため、今の時期が最も広大な範囲を飛び回ることになる。絶対的な縄張りを主張する防衛ラインを越え、その外側に広がる行動圏を拡張し、隣接する別個体に対し誇示行動を行うのだ。

なので思いがけない場所で、且つ同時に複数個体や、侵入個体などを見掛けることもあるし、うっかりすると一度も目視せずに終わってしまうこともある。ま、それもすべて想定の範囲内ではあるのだが。

北部の森でも特に標高の高いエリアでは、いよいよ晩秋の趣が強くなってきた。シカのラッティングコールにかき消されそうになりながら、近くでベニマシコの鳴き声が聞こえてきた。

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