国有林法の改正の行方
今月5日、あまりニュースになることもなくひっそりと改正国有林野管理経営法が可決・成立した。
この法案がどんなものか簡単に言うと、国有林の伐採の裁量をある程度民間業者に認めるというもので、各地で木材の利用を促す目的があるものだ。
戦後、国主導で行ってきた林業政策であるが、国内従事者の賃金の高騰や、輸入材の台頭による国産材の需要の低下など、国内の林業は衰退の一途をたどっている。
そこで、民間業者による大規模伐採を認めることで、採算の取れる林業を目指すことになったのだが、伐採後の再造林について事実上制約がないため、伐るだけ伐って植林しないとか、植林後の手入れが行き届かなくなるとか、外資による参入など森林荒廃への道を作ってしまったのではないかと、専門家の間では懸念と批判が多い。
国内の森林環境に適応して細々と生き延びてきた我らが天狗様ことイヌワシの悲観的な繁殖状況を考えたとき、伐採地が広がることで餌場環境が提供される点では望ましい。
だが問題は伐採後の再造林、つまり森林の再利用が循環して行われない限り、伐採地はその後の自然再生によって有効利用できるのは1回限りの可能性が高いのである。温帯湿潤な日本の気候において、自然植生の回復は意外に早いのだ。
伐採後、植林して手入れを行い、半世紀後に再び伐採という循環が起きて、定期的に餌場環境が創出される状況こそが、イヌワシにとっては理想的な環境と言えるのである。
そしてその時こそ、東南アジアや北欧、北米など海外の森林から無用に資源を調達する必要もなくなり、国内林業の再生という本来の目的が達成されるはずである。
政府の話では「売れる林業」を目指すということらしいが、絵に描いた餅に終わるか、さらなる問題を引き起こすのか、注視していく必要があるだろう。
昨秋の台風で荒れ放題だった村内の植林地に、ようやく春頃から手入れが入り始めた。予定された伐採ではないため、恐らく間伐材として利用されることになるだろう。