適応なのか本来の性質が目を覚ましたのか、それが問題だ
昨夏の話だが、北極圏ノルウェー領にあるスバールバル諸島で、ホッキョクグマがトナカイを海へ追い込んで捕食するというなかなか貴重なシーンが映像で記録された。
季節移動をするトナカイは川や沼を渡るために泳ぎが上手いことで知られているが、ホッキョクグマは海のクマを意味するUrsus maritimusという学名がつくほどこれまた泳ぎが達者なので、場面が海ともなると結果は推して知るべしである。
通常ホッキョクグマの主な餌はアザラシで、沖合にいるアザラシを捕食するためには海面が凍りつく冬季を待つ必要がある。
基本的に他のクマが持つような雑食性はないため、アザラシを狩ることのできない夏季は絶食して過ごすことが知られていたのだが、昨今の食事事情はかなり変化してきていると研究筋は見ているようだ。
一つは地球温暖化の影響による北極海の海氷の急速な減少が挙げられ、ホッキョクグマが海に出ていられる期間が短くなってきていること。
もう一つは、スバールバル諸島のトナカイの生息数が増えた..1900年代初頭に禁猟となっている..ことで、餌動物としてホッキョクグマの狩りの対象となってきたのではないかということ。
前者は地球温暖化問題ではよく知られた象徴的な事柄だが、後者については我々が知っているホッキョクグマの生態にもかなり地域ごとに差がある可能性を示唆していることになる。
実は見た目とは異なり、ホッキョクグマはヒグマと交雑できるほど近い存在であることが知られている..20万年ぐらい前なので種の分化としては割と最近..ので、本来クマが持つ雑食性が目を覚ましつつある、もしくは今でもその性質はそのままである、ということになるのだろう。
今のまま地球温暖化が進んで局地の氷が減少すると、ホッキョクグマは今世紀中に絶滅すると言われているが、先のスバールバル諸島の例など見ていると、我々が考えている以上に環境に合わせて生活史を順応させていくことも考えられる。
もちろんだからと言ってこのまま地球温暖化を良しとすることにもならないけどね。
県内のスキー場は今週末辺り開かれれるところがボチボチあるようだが、関係者は一昨日から続く雨を恨めしく思っていることだろう。
冬の雨は寒気が入っていれば標高の高い山では雪になるので、普通に考えれば恵みの雨なのであるが、こう暖かい日が続くと迷惑でしかない。