4Kの使い道
4Kを放送やビデオのフォーマットと捉えると、それは先日記事にした通りなのだが、映像素材として捉えると、実はいろいろ使い道が広がったりして面白いのである。
まず、現在標準のフルHD..つくづく妙な日本語だが、これはすべてソニーとパナが悪い..は約2Kである。単純に考えても4Kは面積比でその4倍の解像度があるため、最終フォーマットが2Kであるなら、編集の際に最大で1/4にトリミングすることができる。簡易的に望遠効果を上げたり、演出上のズーミングやドリーショットなどショットトランジッションを編集段階で行えるわけだ。
もちろん、予め準備して撮影に挑むのが本筋ではあるが、特機など使わずに低コストで映像制作をする点で、すでに業界内では使われている手法である。
また、4Kから2Kへのダウンコンも画質面では有利に作用する。HDからSD(主にDVD)へのダウンコンは期待したほど機能せず、最初からSD画質で撮ったほうが総じて良い結果となったが、4Kの場合はその圧倒的な情報量が功を奏し、2Kで撮った映像より4Kからダウンコンした2K映像のほうがきれいである。それに関連してノイズ対策に有利に働くことも、高感度で撮影したデジタルカメラの画像をより小さいサイズに縮小してみればすぐに判る話だ。
動画ではないが、4Kになって静止画の切り出しも実用的になった。4Kはその情報量から必然的にプログレッシブなので、1フレームが1コマを現すことになる。4K動画の任意の1コマを切り出した静止画は、その時点で立派な800万画素のデジタル画像となり、すでに一頃のデジタルカメラと同等である。800万画素もあれば雑誌の見開きや広告には必要十分であり、時間軸の流れの中から適切なカットを選び出せるのは、ある意味革命的でもある。
ただ、静止画の切り出しには注意が必要である。動画は撮影時のシャッター速度に制限があり、概ね1/30〜1/100程度が望ましい。しかし、実際に動画から静止画を切り出してみると判るが、被写体が動いている場合は大抵ブレているのである。動画の場合はそのブレが自然な動きを見せる..目の錯覚を利用しての話..のだが、静止画の場合はそれでは都合が悪い。
そこで、二兎を追う者は一兎をも得ずということで、静止画の切り出し前提の場合は、通常のスチル撮影同様に明るいレンズでシャッター速度をなるべく早くして撮るのがベストだ。動画ではタブーのパラパラ漫画状態を意図的に作り出し、4K30Pなら800万画素秒間30コマの超高速連射機として使うわけである。
4Kはまだまだ過渡期のものであり、今後もしばらく2Kと共存していくと想像する。ちょっと前に業界こぞって3Dを持ち上げて見事に失敗した..映画の世界では生き残ったけどね..が、使い方の面では3Dは時代の徒花だったと言えるだろう。その点、4Kまたは8Kは素材としてジワジワと浸透していくように思う。
4Kだから4Kフォーマットの映像を出力しなければならないのではない。4Kだから動画を撮らなければならないのではない。4Kから高画質の2K映像を出力しても、はたまた4K動画から高画素のデジタルスチル画像を切り出してもいいのである。要は使い方次第なのだから..
今、キリの花が見頃である。その独特の青い花は、田舎の初夏の風物詩だ。
田舎の里山環境で、民家の周囲にクワなどと並んでよく見られる木にキリ(桐)がある。木材としては軽く、湿気を通さないため狂いが少なく、しかも燃えにくいという性質が知られているため、古くから家財道具の材料として使われてきた。成長も早いので、女子が生まれると庭先にキリを植え、結婚時に嫁入り道具としての箪笥を作るという風習は、その代表的な例であろうか。