なんてタイトル付けると、流行遅れの話題に乗ったのかと思われそうだが、これはれっきとした映画のタイトルである。あ、いやそっちの米の国の雪女の話ではなく(汗)、昆虫写真の大家、栗林慧氏が撮影と総監督を務める3Dネイチャードキュメントのことである。
栗林氏は、私のようなアニマ世代にとっては言わずと知れたNPS..ネイチャーフォトスタジオのことでナイコンのプロサービスではない..創設メンバーであり、押しも押されぬ昆虫写真分野では世界的名声の高い写真家として知られている。
大光量ストロボによるハイスピード撮影技術の開発に始まり、超被写界深度接写レンズ、通称「アリの目レンズ」を備えた特殊カメラの開発など、今現在、自然科学の分野で当たり前のように使われている技術を確立したのも同氏である。
そして40年以上も自然科学分野で活躍してきた実績が認められ、科学写真のノーベル賞と言われるレナート・ニルソン賞を受賞(2006年)されたのは日本人では初であり、生物写真の分野で紫綬褒章を受賞(2008年)された写真家も栗林慧氏が初めてである。
映画「アリのままでいたい」は、そんな同氏のお膝元である長崎県平戸を舞台に、ドイツの最新型内視鏡カメラを改造して撮影された、アリの目線から見た昆虫の世界を3D映像でまとめた作品である。最近は虫に興味を持つお母さん方もにわかに増えていると聞き及んでいるので、昆虫少年の夢を掻き立てるような本作を、是非とも親子ともども夏休みにご覧になっていただきたい。勿論、お父さんにとっても昔取った杵柄で、父親復権の役に立つことうけあいだ。
■映画『アリのままでいたい』
■監督:鴨下 潔/撮影監督:栗林 慧/音楽:菅野祐悟
http://www.ari-no-mama.com/introduction/index.html
先日、これまた動物写真のその世界では有名な飯島マサさん..もNPSメンバーのお一人..の紹介で、栗林先生にお会いする機会を得られた。前述したとおり、私にとってはアニマ時代からの憧れの写真家で、それはまさに雲上の方なのである。御年75歳!とは思えないその颯爽とした佇まいと、経験からくる言葉の重みに、すっかり酔うことも忘れて少年に成り下がった私であった。