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新春一鷹

2018/1/2

みなかみ藤原など上越国境に近いエリアを除けば、小雪の続く利根沼田界隈。標高の低い林道であればジムニークラスのクロカン4WDなら少し奥までアプローチできるところもある。

鉄砲撃ちが付けたであろう雪の轍を辿って、サルを探してゆっくりと林道を流していると、割と近くで「ピィ、ピィ、ピェ〜」という甲高い猛禽類の鳴き声が聞こえてきた。

カメラを片手に長靴ツボ足でズボズボと支線を100mほど歩いていくと、声の主は沢を挟んだ対岸のスギ林付近にいるようである。しばらく探していると、最初の音源と反対方向のカラマツの横枝に、クマタカの雌が止まっているのを確認した。

FUJIFILM X-T2 / XF100-400mm F4.5-5.6 R LM OIS WR

距離にして50〜60m程度だろうか、向こうからはこちらは丸見えのはずだがほぼ無関心。当初より鳴いている声の主..この時点で音源が移動しているが判ったので飛んだのだろう..の方をジッと注視している。

やおらこの雌も2声ほど鳴いてから飛び立ち、一旦林影で見失うもすぐに3羽になって戻ってきた。うち1羽は昨年生まれの幼鳥、他2羽は先ほどの雌と雄のペアらしく、幼鳥を追い払うと言うほどではないが、特には雄のほうが何となく最初の止まり位置に近づけさせたくないような行動をしていた。

と書くと如何にもだが、このクマタカはよく見知っているペアで、割りと成績よく繁殖しているのである。今日の幼鳥も恐らく昨年のがまだ周辺をうろついているといった状況なのだろう。

ここ数回の繁殖に利用していた巣は把握していないが、以前の古巣は知っている。でもそれは今いる谷ではないので、今日の行動から今年はこの谷の先ほどの林を使うつもりなのかもしれないな、などと思いつつすぐに引き上げてきた。

FUJIFILM X-T2 / XF100-400mm F4.5-5.6 R LM OIS WR x1.4

本来なら一富士二鷹の順が望ましいが、今年は富士より鷹のほうが最初であった。でもフジで鷹を撮ったからそれでもいいっかw

もっと言えば、初天狗様より先に小天狗を観てしまうというのは思うところがないわけではないwが、まあ近年は以前のような原理主義を捨てて懐広く自然と接することを心がけているので、さもありなんだね。

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イノシシやシカなど野生動物は人の匂いには敏感で、猟師の仕掛けたワナに露骨に人の匂い付いていたりするとすぐに見破るという。

しかし人工物などは抵抗なくむしろ積極的に利用しているフシがある。タヌキは廃屋を、ハクビシンやムササビは山小屋や神社仏閣などを、ツバメやスズメなら人が住んでいる家に巣を造るといった具合に。

ハヤブサの仲間が都市部の高層建築物に営巣する例は世界的にも以前から知られているが、同じワシタカなど猛禽類には人工物を積極的に利用して生活している種が多い。

トビなどは休息のために鉄塔..高圧線の支柱や橋の欄干、携帯アンテナなど..によく留まるが、オオタカやハヤブサそれにノスリなどは、ハンティング行為の一部として探餌を行う際に頻繁に鉄塔に留まる。営巣地が近ければ誇示行動の一部でも同様だ。

ワシタカの仲間は、飛びながら餌を探すタイプと待ち伏せして餌を探すタイプに分けられる。例として挙げた鉄塔の類を利用するのはどちらかと言うと後者に多く見られ、チュウヒなど草原性のタカはほとんど鉄塔などに留まることはない。

もちろん何事にも例外はあり、ハイタカ属のハイタカやツミはオオタカほどは人工物に留まることは少ない。同じ待ち伏せ猟をするにしても、目立つ場所に留まるのではなく、どちらかと言うと雑木林の林縁部など枝先でひっそりと探餌することが多いようだ。

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山間部を通る高圧線の鉄塔に留まって探餌するクマタカ。

クマタカは日本産のタカの仲間では最大で、その昔は深山幽谷にすむ希少な生きものと考えられていたが、実際は意外に人里周辺でも生活していることが知られている。

さらに鉄塔大好き猛禽と言っても言い過ぎではないほど、鉄塔に留まる姿を季節を問わずよく見かける。餌を探すのも鉄塔、巣を見張るのも鉄塔、交尾をするのも鉄塔、休息するのも鉄塔だったりして、まったく人工物に頓着しない..ただしダムやスキー場などの構造物にはほとんど近づかない..性格なのである。

これに対して徹底的に人工物を嫌うのが天狗様ことイヌワシだ。テリトリー内の見晴らしの良い場所に探餌に都合の良い鉄塔が立っていても、わざわざ近くの尾根上の枯松に留まっていることが多い。

北米のイヌワシには風発の風車に留まる強者がいるらしいので、イヌワシといえど絶対という話ではないのだが、そこら辺は土地柄お国柄の違いなのか、よく判っていない。

と言うことで、一部の種を除けば、野生動物といえど人工物を積極的に利用するのである。天敵ともいうべき人の手による人工物とどこまで認識して、背に腹は代えられないとばかりに割り切っているのか、そもそも我々が思うほどは無機物、有機物の別け隔てがないのか、その辺りは定かで無い。

で、我々は今日もまた、視界に入る鉄塔を端から順に眺めることになる..

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北部フィールドでは普通種のクマタカ。場所によってはハイタカ属よりもよく見かける。こちらは別にこれと言って用はないのだが、向こうから近づいてくる分には遠慮なく撮らせてもらう。午前中、ペアで目の前を飛び回り、仲睦まじく爪合わせなどしていたが、1羽がこちらの頭上まで来てジロジロ眺めて去っていった。

午後に再び近くまでやって来たが、向かいの稜線上に天狗様が姿を見せると、アッという間に背後の尾根を超えて姿を消し、天狗様がいなくなってもその後はまったく姿を見せなかった。名前も見た目も勇壮なイメージがある猛禽だが、同属同士では争っても、大抵は他種に追い回されて林内に逃げ込む事が多く、案外小心者だ。

写真家の宮崎学氏が、著書「鷲と鷹」で「野武士のようだ..」と表現されていたが、私的にはまったくそんなイメージはない。

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忘れた頃に

2012/12/4

久々に新規にカメラサポートを手に入れた。

現在、動画はDSLRでの撮影がほとんどなのだが、カメラサポート周りはヘッドと脚がデカイか小さいかの両極端の状況が永らく続いていた。今回はそれにようやく終止符を打った形だ。

EOS xDでもGHxでも、従来のカムコーダーに比べると大きさも重さも小さく軽いため、どうにもバランスが悪かったのだが、DSLRムービーは何れもここ2・3年で登場してきたカテゴリーのため、なかなか適当なカメラサポートが無かったのである。

カメラ単体にレンズ1本なら、マンフロットの701HDVがまあまあ良い仕事をしてくれていたが、トップハンドル付きのリグに載せ、外部モニターに外部マイク、フォローフォーカスを組み合わせると、途端に役立たずになってしまう。手持ちの中ではサクラーのDV6がバランス的には良いのだが、脚をジッツォのカーボンに換装しても、歩いて動き回るにはやや重すぎるのである。

調べると、今はDSLRムービーにフィックスした製品が色々出ているのが判った。DSLR撮影では用途に応じてアクセサリーを組み合わせるため、ポイントはドラッグスピードとカウンターバランスの調整が何段階かでできる点と、DV6とジッツォ3型カーボンの組み合わせより軽いこと、などが挙げられる。実際は直接触ってみたいのだが、田舎故に目星を付けた製品を現物として見るのは至難の業。ところが便利なもので、世界にはVimeoやYouTubeにインプレを動画でアップしてくれている奇特な方々がおり、今回は色々参考にさせてもらった。

実は注文したのは8月のことである。人気があるのかどこも在庫不足になっていて、いつもOut of stockだったのだが、クリスマス商戦たけなわのこの時期になって、ようやく出荷されてきた次第である。国内には在庫しているショップもあったが、何せこの円高、海外通販のほうが圧倒的に安いのだから仕方が無い。ただ、本来は秋の紅葉撮影から導入したかったのだが、注文したことすらほとんど忘れていたのを、先日の夕方ヤマト便のいつもの兄ちゃんが、UPS伝票持って思い出させてくれた(笑)。

さて、今日は天気も悪く外出できなかったので、室内で色々載せて試してみたところ、概ね予想通りでまあまあと言ったところ。何よりコストパフォーマンスが抜群で、来週にもすぐに元が取れるだろう。え?どこの製品を買ったのかって?まあ、それはまた追々(笑)。

そう言えば某所のクマタカは今年繁殖していたらしい。うかつだったが、先日、目の前で幼鳥が鳴いているのを見て初めて気が付いた。フラフラ飛んでいるKなど普段は眼中にないので、気にすることもないのだが、このペアの巣の位置は判っているので、いやホントにうかつ、灯台下暗しだった..

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お株を奪う

2012/12/3

久しぶりに面白いシーンを見た。イヌワシがクマタカのお株を奪うような行動を見せたのだ。

ひとしきり巣材を運んだ後、休憩していたのかと思いきや、突然下流側の林内にいたクマタカに対し排斥行動に出た。

最初は林縁部で攻撃を仕掛けたのだが、クマタカはすぐにブナ林に逃げ込むいつもの行動。それが面白くなかったのか、イヌワシ(雄)はしばらく間合いを計るように停空飛翔状態でブナ林の上空で静止、タイミングを見て一気に林内に降下、ブナの枝伝いにクマタカを追い回し始めたのだ。

これには見ていた私も驚いたが、一番驚いたのは狙われたクマタカのほうだろう。よほど泡を食ったのか、イヌワシの攻撃を避けようとバランスを崩してクルクルと林床近くまで落ちて、一度は視界から姿を消した。

すぐにバタバタと上がってきたが、低い枝に止まり直したところを再びイヌワシに突っかけられると、一旦は諦めて反撃しようとしたのかお互い向き合うように翼を広げて対峙。しかし、クマタカが堪えきれずに林内を遁走し始めると、イヌワシも同じようにヒラリヒラリと木々をかわしつつ後を追いかけ、そのまま両種とも視界から姿を消したのだった。

30分ほど消失地点付近を凝視していたが、谷の上流側上空を旋回するイヌワシ(雄)を発見する。もしかして、と思い拡大望遠でそのうを確認するが、さきほどのクマタカが食われた痕跡は認められなかった..

大型猛禽類の中では比較的翼が幅広で短いクマタカは、林内をすり抜けるように移動するのが得意である。それに対しイヌワシはグライダーのごとく翼が長いため、開けた空間での行動を得意とする。と、杓子定規に語ればまあそんな感じなのだが、実際はイヌワシもヘビなど小動物を狩ることがあるため、一般に考えられている以上に林内を利用するようである。

ただやはり、狭小空間は本来好む主戦場ではないため、形勢は危うかった可能性もあったが、今回のケースでは明らかにクマタカが不利のように見えてしまったのもまた事実。襲うものと襲われるもの、その立場の違いも大きく影響していたのかもしれない。

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