何者かにジッと見られている、そんな気配を感じた。
またシカと思い周囲の林縁を探すが、それらしき大型獣は目に入らず。ふとその手前の草地にポツンと佇むキツネが一匹目に入る。どうやら視線の主はこいつらしい。いつからそこにいたのか判らないが、こちらの動きをひっそりと注視していたに違いない。
山に入ると時々こんな感覚にとらわれることがあるが、野生の生きものは案外こうして人の動きを見てやり過ごすことをするものだ。先に気付けばそれでよし、不幸にも出会い頭になってしまえば、弱いほうに何らかの力が作用することになる。