清明
県北部の林道は例年並みにまだ残雪が多く車では侵入できないため、春の日差しに小汗をかきつつ、機材背負ってえっちらおっちら徒歩でアプローチする。
雪上を風に吹かれてフワッと鳥の羽毛が飛んできた。付近を双眼鏡で探すと、渓流沿いの藪の中に何かいるように見えるが、ちょっと斜面が急過ぎて降りるのは叶わず。色味がテンのように見えなくもないが、向こうもこちらに気づいたようで、藪伝いに逃げていく気配だけ感じた。
何か獲物を捕らえて解体中か食事中か、そんな雰囲気だったので、待っていれば戻ってくるかもと思いつつ、今日は目的が違うとぞと自分に言い聞かせて先を急いだ。
獲物はキジ雌だったようだ。
帰り掛けに同じ場所を角度変えて双眼鏡で探したが、獲物の本体もそっくり無くなっていたので、3時間あまりの間に獲った本人か、はたまた別のものかが持ち去ったようだ。
草津の湯釜の稜線越しに西の空が赤く染まる。大気中に浮遊物が多い証拠だ。
今日は二十四節気の清明で、その意味は「万物がすがすがしく美しい頃」を指すらしいが、花粉と黄砂が混じったようなヘイズまみれの大気では、とてもそんな気分に離れない。