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20121114

言うまでもなく鳥は空を飛ぶ生きものである。

鳥はその大小にかかわらず、身体的な特徴として両腕を2枚の大きな翼として利用できるように進化してきた。そしてその2枚の翼を用いて、地球上の大空を自身の力のみで自由に移動できる点で、地べたを四肢で移動する以外に手段のない他の生きものとは大きな違いがある。鳥好きのその多くは、空を飛ぶことができるという能力にその魅力を見いだす人は多いはずだ。

飛ぶことがある意味当たり前な鳥にあって、空を飛ぶことで主たる生活の糧をえる種類には、高速で飛ぶもの、長距離を移動するもの、水中に潜るものなど、その能力がひときわ長けた仲間が当然のごとくいる。とりわけ、他の生きものを直接襲って餌とする猛禽類の飛翔能力の高さは、鳥の仲間の中でも特筆すべきものがある。

学名の Aquila verreauxii からも判るとおり、ブラックイーグル(現地での呼び名)はAquila属、つまり旧北区を中心に日本にも生息するイヌワシの仲間である。英名はVerreaux’s Eagle(日本名コシジロイヌワシ)で、生息地はアフリカ大陸。大きさやフォルム、それに生態はまさにイヌワシのそれとうり二つであり、全身黒色の羽衣に覆われ、背中から腰に掛けて和名の由来でもあるワンポイントの白が美しい。

写真集「GoldenEagle イヌワシ(平凡社)」の著者である、滋賀県在住の写真家須藤一成氏の撮り下ろしになる本作品では、そのブラックイーグルの巧みな飛行術を、余すところなく見事なカメラワークで捉えている。

猛禽類は小型になるほどその敏捷性は増す傾向にあるが、翼開長がゆうに2mを越す大型のワシが、空の高みから地表すれすれまで、重力を無視したかのようにアクロバティックでダイナミックな動きを見せるのは圧巻である。常にペアで行動すると形容されるほど楽しげに舞うディスプレイフライトや、餌の大半を占めるダッシー(ハイラックスの現地名)との攻防、そしてハンティングシーンなど。特筆は大型のワシではまず見られない宙返り飛行である。

撮影地であるジンバブエのマトボヒルズは、世界遺産にも登録されている貴重な場所だ。本作品では、その奇峰奇岩の太古の風景をバックに、悠然としてそれでいて力強い飛翔能力を魅せるブラックイーグルの姿を堪能できるはずだ。

The most beautiful flyer in the world.

世界で最も美しき飛行家。サブタイトルにある上記フレーズは、本作品で編集とDVDオーサリング、それにパッケージデザインを担当させてもらった私が贈った言葉だ。飛ぶことがすなわち生きることを体現する飛行術の先輩である鳥に対し、敬意を現す意味で、人類初の飛行に成功したライト兄弟の機体からお借りした言葉でもある。

空を飛ぶ生きもののその完成された美しい姿を、ワシ好きや鳥好きにとどまらず広くご覧頂ければ幸いだ。