GoTo鹿せんべい
新コロナ禍の影響で観光客が減っているのは全国的、いや全世界的か。
そしてそんな観光業の不振に配慮した政策がGoToトラベルなわけで、感染拡大と経済回復を天秤にかけた、恐らくは結果について誰も責任を取らないであろう壮大なる実験ということに他ならない。
その観光客が減ったことで人だけでなく、困っている生きものがいるというニュースを見たが、それは奈良公園のシカの話であった。
奈良公園のシカは春日大社や東大寺のある同公園とその周辺の市街地で見られるが、動物園のような飼育個体ではなく、純然たる約1200等程度の野生の個体群として奈良では扱われている。
夜間は公園とその周辺の林の中で過ごし、日中は餌を求めて参道や公園内の緑地に姿を見せる。
一般的に野生のシカは人を見ればあっという間に遁走するが、彼の地の個体群は古来より保護されてきた経緯があるため、人を見ても不要に恐れることはなく、むしろ観光客から与えられる餌..いわゆる鹿せんべいだな..を求めて近づいてくるのである。
当該ニュースは「観光客が激減したために餌をもらえなくてやせ細る個体が出始めている」といった内容だったが、さも餌がもらえなくて餓死でもしてしまうかのような視点は早計だな。
確かに若いシカを中心に鹿せんべいに依存している個体は一定数いる可能性はあるが、飼育個体ではない野生種なので、人とは付かず離れずと言った距離感を保っている個体がほとんである。野生の生きものは餌のある場所に執着はするが、手に入らなければまた別の場所へ移動するだけである。
人為的な餌付け問題はさておき、そもそも日中に観光客の前に姿を見せるのは、鹿せんべいという「餌場」に移動しているだけで、動物園の個体が飼育員のバケツを待っているのとは本質的に意味が違うぞ。
ま、ワイドショー的なマスゴミ報道なんでそこまでとやかく言ってもとは思うが、GoToトラベルにかこつけて「観光客の与える鹿せんべい」というステレオタイプ的な見方に囚われるのは間違っているし、野生動物をナメていると言うほかはないな。
ちなみに記事のタイトルに深い意味はないw
普段地元ではシカは白い尻毛を見せて逃げていく個体しか見かけないのでw、野生でこの近さはある種異様ではある。
が、徹底した保護のもとで人と共存共栄できる手立てがあるならば、野生動物と言えど種によってはここまで距離を詰めることが可能ということだ。
もちろんこれはシカが食われる側の餌動物の立ち位置にいるからに他ならず、これが捕食する側の肉食動物であれば話はまた違ってくるけどね。