モーリシャスの座礁事故
東アフリカのマダガスカルの東方、インド洋に浮かぶ島国モーリシャスで、座礁した日本船籍の貨物船わかしお(長鋪汽船所有)から燃料が流出する海難事故が発生した。
わかしおは中国で積荷を降ろした後、インド洋経由でブラジルに向かう途中、海が荒れて同国内で座礁したらしく、燃料油タンク4000トンの一部が破損、そのうち約1000トン分が流出したとのこと。過去の同様の事故に比べて特別に流出量が多いわけではないが、問題なのはその場所だ。
ラムサール条約にも指定されているポワントデスニーの美しいラグーンが、流出した重油にまみれている状況は何とも痛ましく、貴重なサンゴ礁の他、周辺海域の生態系への影響が懸念されている。モーリシャスの経済は観光と漁業で成り立っているので、海が汚染されることは死活問題である。
モーリシャスは英が宗主国であるが、もともとは仏領だったこともあってフランスとの関係も深く、今回の事故を受けて同国海軍が専門の対策チームを派遣し、国連の専門家と共同で事態収拾に尽力しているとのことだ。
日本からも商船三井が専門チームを派遣してすでに現地入りしているが、たった6人では何とも心もとない。日本国内でも23年前に日本海で起きたナホトカ号重油流出事故は記憶に新しいが、その際に重油回収に自衛隊が協力しノウハウや知見が残っているはずなので、災害救助隊として派遣するなど検討しても良いのではないだろうか。
何より地元の人達が油まみれになりながらバケツリレーで賢明に回収作業に当たっているのを見ていると、ふとそんなことを思ってしまうぞ。
それにしても本件についての国内報道が異様に少ないのが気になる。日頃から無駄に「日本スゴイ!」を喧伝しているので、日本船籍の船が他国で迷惑をかけているのはよほど不都合なのか、それとも船主である商船三井という大手海運会社に忖度でもしているのか。
良いことをしている日本人ばかりに目を向け悦に浸るのではなく、日本が関係している良くないこともしっかり報道すべきだろう。
25年前のマダガスカルにて。インド洋に面した同島南端のトラニャロ..仏語ではフォール・ドーファンと呼ばれている..の海岸にも、何隻もの座礁船が放置されていた。
インド洋は太平洋や大西洋に比べて面積こそ小さいが、季節風と深層海流の影響を強く受けている。特に季節風によって海流自体が季節ごとに消滅したり反転したりするのが特徴だ。
大航海時代より喜望峰を経由して欧州とアジアを行き交う数多の船がいたが、それと同じく数え切れないほどの船が海の藻屑と消えた歴史もあるのだろうな、そんなことを想いながら若き日の自分が写したのがこの1枚である。