その長大な翼を羽ばたかせることなく延々と波間を滑るように飛ぶ能力を持つアホウドリ。
名前だけ聞けば何ともまた失礼極まりない名称が付けられた鳥ではあるが、個人的に鳥類の中では野生のペンギンと双璧をなすまだ見ぬ憧れの種の一つである。
同じ仲間で南半球の南極海周辺に生息しているワタリアホウドリなど翼開長が3.6mもあって、現存する中で世界最大の鳥でもある。
我らが天狗様ことイヌワシが大陸の亜種まで含めて1.8〜2.4m、オオワシが2.2〜2.5m、一般的に大きいと知られているコンドルでさえ3.2mなので、いかにアホウドリの仲間が大きいか分かるだろう。
アホウドリは国内にも生息しており、夏の間はアリューシャン列島周辺で生活していて、冬に繁殖のために日本近海へ移動してくる渡り鳥的な動きをしている。
今でこそ現繁殖地の鳥島ともども国の天然記念物に指定されて保護されているが、それ以前は羽毛や食肉目的の乱獲と、糞の堆積物から得られるリンを目的とした繁殖地の破壊が原因で生息数が激減した経緯がある。
アホウドリは飛ぶことには関して長けていたが、絶海の孤島に暮らすあまり人をあまり恐れない性格と、地上を歩き回る姿がのんびりとしていて捕獲自体は容易..飛ぶためには長い助走が必要なのだ..であるため、それが名前の由来と言われている。
ちなみにこれは以前にも書いたが、アホウドリ研究の第一人者である長谷川先生は、大海原をグライダーのように優雅に飛ぶ姿を現して、長崎界隈で古くからの呼び名であるオキノタユウ(沖の太夫)を提唱している。
そんな国内のアホウドリだが、鳥島の他に尖閣諸島に由来する2つの個体群がおり、双方は割と以前から別種ではないかと言われてきていた..鳥島産のほうが大きくくちばしの形状も長い..が、先ごろ北大の総合博物館と山階鳥類研究所の共同研究で正式に別種であるとする論文が発表された。
ただでさえ数を減らして絶滅が危惧されている(絶滅危惧II類)上に、これにより希少種が2種類に増えることでその保護の重要性がさらに高まったことになる。
鳥島では火山活動が活発化する兆しがあるので、近くの小笠原諸島の聟島に繁殖地を移設する計画が近年進められてきているが、尖閣諸島に関しては中国とのいざこざを理由に調査も上陸もままならないため、これ以上面倒できな臭い事態にならないことを願いたいものである。
ちなみにゴルフのプレーでパー5から3打少なく終了することをアルバトロスというが、これはアホウドリが絶滅危惧種で珍しいことから、滅多に見られないプレーということでアホウドリの英名であるAlbatrossに由来としている。
Canon EOS 7D / EF500mm F4L IS USM / イヌワシ
長い翼でグライダーのように滑空すると言えば我らが天狗様も同様。
ひとたび上昇気流をつかまえてソアリングを始めれば、羽ばたきを忘れたかのように延々と飛ぶ姿を見せてくれる。
大型の鳥が悠々と大空を舞う姿にはある種の憧れを感じるよね。