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夏の午後遅い日差しの中、青田の中をSLみなかみ号が行く。

穂が出始めた田んぼで案山子に見送られながら、というシチュエーションで夏らしいSLの情景を狙った。

登り坂なら蒸気モクモクとなるところだが、光を優先すると上りの運行..ややこしいが状況は下り坂..となるため、まあそこはやむ無し。

FUJIFILM X-H1 / XF16-55mm F2.8 R LM WR / Velvia

この時期の西日の斜光で稲が透過気味に写ることを想定して場所を選んでいるが、この光線状態だと黒い機関車は黒く潰れてしまう。

フイルム時代なら諦めるしかない状況だが、今はデジタルの時代。レタッチでシャドウを持ち上げ少しHDR風に仕上げれば意図した通りに。ただ、このカットはX-H1をVelvia&Dレンジ優先(強)に設定しての撮って出しである。

今になって昔の作品を整理してつくづく感じることだが、RAWで撮っておけば後でどうとでもなると思っていても、撮影時の意図を何年も後まで覚えていることなど不可能。鉄は熱いうちに打ての格言通り、撮影時にできることは撮影時に済ませておくのが良い。レタッチするにしてもその日のうちがベストである。

想像してみて欲しい。何万枚も撮り溜めたRAWデータを、後年になって一枚一枚モニターで確認しながら現像・ゴミ取り・レタッチして仕上げていくことを。恐らくそれは苦行僧の如き忍耐の伴う作業を強いられるのは間違いない。

話のついでに言うと、そもそも業界的にレタッチで追い込むことを好む風潮がある..それを推奨することで商売が成立している市場があるのだ..が、レタッチ耐性だの高解像度のトリミング耐性だの小難しい話は別にして、レタッチ前提に撮るならカメラなどどこのメーカーのものでも良いということになる。

以前は別の意味でRAWを残すことにこだわっていたが、富士フイルムのカメラ..正確にはフィルムシミュレーション..を使うようになって以降、撮りっぱなしのJPEGで済むならそれに越したことはないという考え方に変わった。以前なら納品はTIFFでお願いしますなどと聞いたふうなことを宣う編集者もいたが、今やJPEGで何の問題もないのである。

もちろん業務の関係ともなれば話は別で、当然のように同時記録でRAWも残しておくが、それはあくまで保険ってことだ。JPEGで済むならそれで良し、成果物としてお金をもらう以上、要求に基づきRAWから現像後にレタッチして仕上げることも仕事のうちだからね。