ニュートンは無かったことに
今の若い人は知らないだろうが、AppleはiPhone登場以前に、現在のスマートデバイスの原型とも言える携帯端末(PDA)を発売していたことがある。
その名をNewton(ニュートン)と言い、iPhone(2007年)から遡ること14年前、2016年現在からは23年前の1993年の話である。
By Blake Patterson from Alexandria, VA, USA – Newton and iPhone: ARM and ARM, CC 表示 2.0
(左:Newton 右:iPhone4 出展:Wikipedia)
正式名はNewton Message Padだが、市場ではOSの呼称であるNewtonと呼ばれていた。NewtonはAppleからスティーブ・ジョブズを追い出した張本人である、当時のCEOであったジョン・スカリーに指揮され世にリリースされた製品である。
当時としては革新的な手書き文字認識を使用したインターフェイスは、その後に登場するシャープのザウルスや、PalmPilotなどに大きな影響を与えたと言われている。
その目玉の手書き文字認識機能は、発売当初こそ評価は低かったが、ジェスチャー認識が使えたりするなど、当時としては最先端を走っていた。ただ、価格が高かったのと、英語圏以外ではほぼ使い物にならなかったので、商業的には失敗と言っていいだろう。
公式には日本語が使えないこともあって、個人的には使ったことはなかったが、周囲にはNewtonを持ち歩いていたマニアックな連中が数名居たのを憶えている。と言いつつ、個人的にはさらにマニアックなHP200LXを使っていたけどね(笑)。
で、このNewton、意外にも1998年まで5年間も細々と発売されていたのが、1996年にAppleに復帰したカリスマ・ジョブズによってプロジェクトが凍結、破棄されることになる。そして本日アップされたAppleの以下の動画を観ると、現在のAppleにおけるNewtonの立ち位置がよく判る(17秒辺り)というものだ。
確かにiPhoneで成功した今のAppleにとっては、Newtonは暗黒史といえるかもしれない(苦笑)。
余談だが、Newtonはハリウッド映画に小道具として登場したことがある。スティーヴン・セガール主演のUnder Siege(邦題:沈黙の戦艦 1992年)の続編である、Under Siege 2:Dark Territory(邦題:暴走特急 1995年)の中で、セガール演じる主人公ケイシー・ライバックが、列車の中で公衆電話を壊して電話線を取り出し、Newtonと直接結線して、FAXモデムからホワイトハウスに手書きメッセージを送るシーンで使われた。
1995年当時はすでにWindows95が世に登場しており、世界的にインターネット普及元年だったこともあって、電子メール自体は使われ始めていたが、携帯端末からメールをモバイルで送るという仕組み自体はまだ一般的ではなかった。
何しろ、今では当たり前のキャリアメールの走りであったDoCoMoのiモード..携帯電話による世界初のIP接続サービス..も、サービスが始まったのは1999年のことである。
浅間山の残雪も少なくなってきた。そもそもの積雪量が少ないこともあって、やはりこの春の雪解けは例年よりかなり早い。