クマが出た
んだそうだ。それもうちの組内の班長の家で。
なんでも、このところずーっとイノシシに畑を荒らされていて、堪忍袋の緒が切れたとかで、有害駆除申請したんだそうだ。
さっそく猟友会がやって来て、畑の際に捕獲檻を設置して一週間ほど様子を見たところ、目的のシシでなくクマが掛かっていたらしい。そこで何より驚いたのは倅のヨメさんだろう。アプローチ路を探ったところ、小中学、保育園と子どもがフルセットいて、その彼らが日常的に出入りする場所を、クマは行ったり来たりしていたと言うのだから。
連絡もらったときは打ち合わせ中ですぐ抜けられず、あとで結果だけ聞いたのだが、体長は1mほどの60kg少々の若いオスだったとか。動物との共生を目指す我が村、いや、見つけ次第片っ端から駆除する我が村としては、当然のごとく若きクマは哀れ殺処分の運命に。
聞き取り含めちょっと調べたところ、クマの目当ては畑にすき込まれた未収穫のトウキビ。そう、つまりクマはシシの身代わりになって死んだのである。皮肉にもその当日の騒ぎでだいぶ人の匂いが残ったのか、シシによる畑荒らしはその後は止まっているようだ。
捕まえたクマにトウガラシスプレーなど吹きかけてお仕置きを施し、山奥に連れて行って再放獣する奥山放獣が今のトレンド。されど人的資源も無ければ予算も無い。無い無い尽くしで、何よりその気が無いのが一番問題。それに奥山と一言で言っても、我が村の奥山は赤城山であり、その奥山のさらに奥山は観光地だったりして、結局どこか余所の市町村に放すしかないのである。
でもそれを受け入れてくれる自治体など、同じ郡内といえどそう簡単に見つかるわけもなく、やはりここは県が重い腰を上げて仲介するなりビジョンを示す必要があると思うのだ。せめて農業被害を名目に、たまたま罠に掛かってしまって面倒だからと殺処分の憂き目にあう、そんな運の悪いクマだけでも何とかならんものか、ふと、我が家のコナラのドングリをみてそう思うのである。