巨星墜つ
2016/5/7
すでに主要なメディアでは報道されているが、日本の動物写真のパイオニアとして半世紀以上活躍されてきた、田中光常先生が亡くなられた。享年91歳とのことである。
最近の若いカメラマンは知らないが、我々世代から上の動物カメラマンで田中先生と縁のなかった人はそうはいないのではないだろうか。直接の弟子でなくても、事務所のアシスタント的に関わった人も多い。アラスカで活動していた星野道夫氏(故人)は、3番目の助手だったと聞いている。
個人的に最後にお会いしたのはその星野氏の写真展だったと記憶しており、当時すでに80歳を越えておられたのに声もよく通り背筋もビシっとされ、フロリダでマナティの水中撮影をしていると話をされていたのが印象深い。
田中先生は、それこそ私などまだ生まれていない時代、プロの写真家という職業自体まだおぼつかなった頃から生きものの写真を撮ってこられた方で、ろくな機材などまだ無い時代、手探りの中で様々な撮影方法を考案してこられた。そうして野生動物写真というニッチなジャンルを切り開かれたのは、紛れも無く田中先生なのである。
この春、埴沙萠先生の訃報があったばかりで、こう悲しい話が続くと正直落胆の色を隠せないのだが、まずは長い間お疲れ様でしたと言葉を贈りたい。ご冥福をお祈りします。
この写真を見て月夜だと思った人がいるかもしれないが、これは紛れも無く日中の太陽である。何より今日は新月なのでそもそも月は見えない。
写真とはつくづく面白い。撮り方と見る側の思い込み次第でいかようにも印象が変わるのだ。