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蟷螂の斧

2013/1/9

20130109

登山ブームと言われて久しいが、毎冬の恒例とも言うべき冬山遭難の報がこの年末年始にも多く聞かれた。

少ない休みを利用して、そして以前から計画されていた予定だから。そんな理由で、己の力も顧みず天候も無視して冬山へ向かう愚かさよ。もしそれで命を落としたのなら、死さえ以前から計画されていたことになってしまう。

以前に何度か書いているが、自然の中で遊ぶためにはそれ相応の技術と体力、それに精神力が要求される。特に夏山と違って冬山は経験と特殊な技術が必要だ。その技術も中途半端なものでなく、生き残るために必要な術と言ってもいいだろう。夏山なら何の労もなく出来ることが、冬の雪山では一筋縄ではいかないことは、登山道や傾斜地を10mもラッセルしてみればすぐに判ることだ。

経験を積むことに関して言えば、場数を踏んだから大丈夫というものではなく、これはその術に裏打ちされたものでなければならず、さらに言えば運の良さも含まれるだろう。勢い神頼みになってもそれも困るが、どんなにすぐれた術を持っていたとしても、人の力など自然の猛威の前では蟷螂の斧に過ぎず、冬山なら雪崩一つでそれでお仕舞いだ。命からがら助かるなど漫画や作り話の世界であって、もし生き残れたのならそれは運が良かったとしか言えない。

経験者であっても、冬山に入ると決めた時点で万が一の際の覚悟を持っていなければならない。いや、冬山に挑む資格のあるものなら誰しもその思いは持っているに違いない。それほど冬の雪山は未熟者を寄せ付けない厳しさがある。

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