江戸城再建与太話
今どきの若い人は、皇居が徳川家の居城であった江戸城の跡地であるということ知らないらしい。
昨年の暮れだったか、20代の若いエンジニアと話をしていた驚いた。まあ何れは日本が太平洋戦争をおっ始めたことすら忘れてしまう時が来るのだろう。歴史が繰り返されるというのは、古い記憶が薄れていくことに他ならないからね。
そしてその江戸城であるが、本丸天守閣は家光の時代に築かれた寛永のものが最後であって、それが明暦3年(1657年)のいわゆる明暦の大火で焼失して以来、350年以上再建されていない、ということも意外に知られていない。
よく時代劇の舞台になるのは元禄以降の江戸中期が多いのだが、例えば暴れん坊将軍こと吉宗が、池の鯉に餌を撒きながら家来と話をしているようなシーンで、背景に白い天守閣..姫路城を代役として映していることが多いが、そもそも江戸城は黒壁だしね..が映っているのは明らかな間違いなのだ。幕末もので江戸城無血開城のシンボルとして、勝海舟と西郷隆盛が天守閣で向き合うシーン、あれもあり得ない話である。まあ作り話にそう目くじら立てることもないのだが、歴史好きとしてはやはり史実にある程度は沿って欲しいと思うのである。
正月に、江戸の初期の天文暦学者であった渋川春海を描いた映画、天地明察(制作は角川、原作は冲方丁)を観た。観測により古い暦を廃して新しい暦を作ったという話で、そこには上毛かるたに「わ:和算の大家関孝和」と読まれている藤岡出身の数学者、関孝和も登場するなど興味を引くところがあったが、一番惹かれたのは江戸城のシーン。インサートカットとしてほんのチラッとしか映らないのだが、史実に忠実に天守閣は描かれず、焦げ跡残る天守台のみが表現されていた。話の舞台は明暦の大火の後なので当然といえば当然なのだが、角川もよく判っているではないかと思った次第だ。
そう言えば、2020年の東京五輪までに江戸城天守閣を再建しようという動きがあるらしい。総工費約350億円というから相当な費用が必要となるが、例のドタバタ競技場に比べればかわいいものである。観光シンボルとしては言うに及ばず、再建には国産の木材を使うという話なので、不振を極める国内林業への特需も期待できよう。何より、日本伝統の木材建築技術を世界に知らしめる、いい機会ではないだろうか。
まるで火事でもあったのかというほどの朝焼け。三が日は荒れもせずによく晴れたが、今週末辺りから冬型に戻るようだ。