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アウトドア作家の野田知佑氏が逝去されたとのこと。享年84歳。

日清チキンラーメンのCMに当時の愛犬ガク..いやはや隊のメンバーである作家の椎名誠氏の長男から取った名前..と一緒に出演していたのを記憶している人もいるだろう。

同氏を初めて知ったのはBE-PALの連載だったと記憶しており、驚いたことに紀行エッセイ「のんびり行こうぜ」は以来38年間も連載が続いていたようだ。

何度か敢行したアラスカ遠征に「北極海へ」「ゆらゆらとユーコン」「ユーコン漂流」など氏の著書を多数持ち込んで、荒天でテントに閉じ込められた際などに読み耽っていた覚えがある。

あてどなく荒野に吹く風のような飄々とした文体は、肩ひじ張らずにカジュアルに読み耽ることができ、読む人を氏が焚き火を囲む川辺へと誘うような、不思議な感覚を体験できよう。

カヌーイストという聞きなれないポジションを耳にしたのも野田氏の関係であり、カヌーを漕いで川を流れ下りつつ旅をするという遊びを知ったのは当時のアウトドア少年..と言っても高校生だったけど..にとっては何とも新鮮であった。

今どきの若い人は、川や田んぼで遊ぶことがどこかアウトドアのアクティビティのように考えているだろうが、我々の世代は近所の川で泳いだり..そのせいで碓氷川も烏川も遊泳禁止になったけどw..、バケツを持って行って生きものをさらってくるのが日常の遊びだった。

野田氏の浮浪雲がごとき自由人としての生き様は、大人になり忘れかけていたそんな体験を記憶の中から掘り起こしてくれるタイムマシンそのものだった。

先に逝ったガクや歴代のカヌー犬たちと極北の川辺で再会し、また一緒に旅をして欲しいと願う。いやはや合掌。

RICHO GR1s

ご多分にもれず野田氏の影響でカヌーに乗りたいと考えていた時期もあったが、結局それが実現したのは最後のアラスカ遠征となったグレイシャーベイNPだった。

南島アラスカに位置するグレイシャーベイは星野道夫氏の著書にもたびたび登場する氷の国で、周囲を氷河に囲まれたフィヨルド地形に足を踏み入れるためには、カヌーやシーカヤックが必要なのである。

もちろん拙者にカヌーを操船する技術などないので、漕ぎ手は同行の手練れにお願いしたが、凪いだ水面を滑るように静かに進むカヌーの感触はそれまでに感じたことのないものだった。

今どきならドローンを使う方が手っ取り早いのだが、カメラマン的な感覚で言えば、限りなく水面に近い視点が得られるというのは新鮮な感覚である。

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