餌不足で里へ出てきて捕殺されるクマのために、全国からドングリを集めてそれを餌不足で困っているクマへ届けるための資金をクラウドファンディングで集めているというのがSNSで流れてきた。
以前からその手の話は時折耳にしてきているが、件のクラウドファンディングを見に行ってみた限り、いつものお騒がせ団体ではなくまた新手の有志による主催っぽい感じだが、プロファイル的に根っこは同じかもしれない。
本人たちは至って真面目にやってる感あって、ともすれば美談として片付けられそうだが、全国から無節操に選別なくドングリを集めて蒔くということは、本来その地域の植生ではない種の種で人為的な植生の錯乱を起こすことになる一大事だということに、まったく気づいていないのが何とも痛々しい限りだ。
クマが「可愛そうだ」と訴える同じ口で、生態系とか環境を守るとか言っている時点で、自然界の道理や仕組みが理解できていないのだろう。
ツキノワグマはそれこそ地域個体群としてみればレッドデータの扱いとなる地域もあるが、逆に個体数が定期的に増減を繰り返す..木の実の豊作不作はそれこそ自然の摂理だ..だけで絶対的な絶滅危惧種とまでは言えない地域もあるので、十把一絡げで括るのはかなり無理がある。
人によって捕殺されるクマが「可愛そうだ」という主観的な感情が何事にも優先され、植生を含めた自然環境にまで思考が及ばない時点で、申し訳ないがこの手の取り組みは当人たちの自己満としか受け取れそうにない。
何より個々の個体に対し直接手を差し伸べるのではなく、地域個体群が無理なく子孫を残していける環境保全を図る努力をしていかないと、結果的に徒労に終わる例はいくらでもある。考え方として動物愛護ではなく環境保全が大事なのだ。
もちろん環境保全は土地が絡むのでクラウドファンディング程度では如何ともし難い問題が多々あって、一朝一夕でことが動くものではないが、人の生活圏と野生の境が曖昧になってきているからこそ、環境そのものを保全対象にしていくのが肝要なのだと知ったほうが良い。
生きものの保護は場当たり的に直接行うのではなく、多少遠回りで時間がかかっても間接的なほうがそれこそ持続可能な保全につながるのだ、ということを天狗様に関わる中で学んできているところ。
OM-D E-M1 MarkIII / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
尾根上からブナの森に覆われている谷を見下ろす。クマの痕跡を求めてクマ棚を探すが、今年はブナが不作なのでほとんど棚は見つからない。
この森も昨日今日の大雪でもう深い雪の中に埋もれているだろうな。
OM-D E-M1 MarkIII / LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm F4.0-6.3 ASPH. POWER O.I.S.
それでも時折クマ棚を目にすることもあるが、大抵はクリだ。
かなり長くこの木に居座っていたのだろうと思わせる..クマは食える時に食うを実践する生きものだ..立派な棚は、遠目にはクマタカの巣のようである。